日本人が常に自覚している症状として、常に「腰痛」と「肩こり」が上位を占めている事をご存知だろうか?
症状別にみると、男では「腰痛」での有訴者率が最も高く、次いで「肩こり」、「せきやたんが出る」、女では「肩こり」が最も高く、次いで「腰痛」、「手足の関節が痛む」となっている。
6割の人が日常生活に支障が出るほどの肩こりや腰痛を経験しており、それが原因で病院にいたことがある人も6割弱いました。
特に多くの日本人はバキバキの肩こりで悩まされている事が多い。
なぜ日本人の多くは肩こりに悩まされてしまうのだろうか?
肩こりでバキバキになってしまう原因とはなんなのか?
外人よりも骨格が小さく、筋力が少ないから?
肩こりになりやすい体質だから?
今回は肩こりでバキバキになってしまう3大原因を、臨床経験が豊富な理学療法士が解説していく。
肩こりでバキバキになる3大原因を解説
なぜ日本人は肩こりを引き起こしてしまうのだろうか?
全てが解明されている訳ではないが、私が臨床(現場)で多くの患者様やお客様のお身体をケアしていく上で共通したものが3点ほどある。
それは
- 骨盤や体幹の動きの悪さ
- 肩から腕にかけての筋肉のハリ
- 歯の噛み合わせによる顎関節への負担
である。
これらについて以下に詳しく解説していく。
※柔YAWARAが3大原因について以下の3つの動画内で解説しております。動画で確認されたい方は是非ご覧下さい。YouTubeでは柔YAWARAによく寄せられるお身体のトラブルについて、それを解消するためのエクササイズを定期的に紹介しておりますので、是非チャンネル登録もよろしくお願いします。
骨盤・体幹の硬さが原因でバキバキの肩こりを引き起こす
『猫背』だと肩こりになりやすい。
これは多くの方が周知している事だと思われる。
猫背の状態では
- 肩甲骨が前に出る
- 頭部が前方に突出する
- 背部が丸くなる
この猫背の姿勢によって、肩や首回りの筋肉に物理的な負担が生じやすくなり、「バキバキの肩こり」を引き起こす原因となると言われている。
その為、子供が猫背の姿勢をとっていたら、それを見た親は「姿勢を正しなさい」「背筋を伸ばしなさい」と叱っている事が多い。
でも、ここで疑問に思わなければならない事がある。
それは「なぜ猫背になってしまうのか?」という事だ。
骨が変形してしまっているご高齢な方なら猫背になっていても構造的に致し方無い部分がある。
しかし、骨の変形など無いにもかかわらず、若年者や20〜40代の働き盛りの方々に「猫背」は生じてしまうのだろうか?
そして、バキバキの肩こりを引き起こしてしまうのだろうか?
それを考えなければならないのだ。
よく筋力が無いから猫背になってしまうと考えられる方がいる。
だから、筋力をつけていこうというアプローチをとる。
確かにこれも一つの原因ではあるが、まずやるべきことではない。
本質的には「関節」や「筋肉」の状態が良くない為、猫背を招き肩こりを引き起こしている事が多い。
特に「骨盤」や「体幹」いわゆる「背骨」の関節や筋肉の状態が悪くなっているもしくは硬くなっている事によって、本来あるべき姿勢をとる事が困難になっていると考えた方が良い。
いやいや、それでも筋肉をつけないといけないんだよ!とおっしゃる方がいるのだが、こう考えてみてはいかがだろうか?
例えば、肘が曲がったまま固まってしまったとする。
その状態でダンベルを持ち上げてくださいと言われたらどうだろうか?
かなり苦戦する筈だ。
なぜなら、人間という身体は関節の「動き」が出た上で筋肉の「筋力」が発揮されるからである。
つまり、このケースだと肘という関節が動かない状態で筋肉をつけるというのは非常に非効率でナンセンスなのである。
これは猫背の状態でも同じ事が言える。
骨盤や背骨の関節が十分に動く状態でなくなった為、構造的に筋力を使わないような丸まった姿勢になるのだ。
その状態で筋力を鍛えよという課題を出しても、骨盤や背骨の関節が動かないので筋力などつくわけが無いのだ。
まずは身体の本来の位置に戻す為の骨盤や背骨の「動き」や「柔軟性」を改善していかなければならないのだ。
それだけでも、「猫背」と呼ばれる不良姿勢も改善してくる。
またそれに伴うバキバキの肩こりの症状も軽減してくるのだ。
その状態になった上で、それでも体幹周囲の筋力が足りなければ、鍛えていく必要がある。
- 骨盤・体幹の硬さは猫背を引き起こし、バキバキの肩こりを誘発しやすくなる。
- 骨盤・体幹の硬さを解消出来ていない状態では意識的に猫背を正すのは難しい。
- 骨盤・体幹の硬さがある状態では筋力をつけようとしても筋力はついてこない。
- 猫背を正してバキバキの肩こりを解消したいのなら、筋力を鍛える前に骨盤や体幹の柔軟性を改善行く事をオススメする。
※体幹が原因で生じてしまう肩こりの解消方法はこちらの記事にて詳しく解説しておりますので肩こりがつらい方はぜひご参考にしてください。
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前腕の硬さが肩こりを引き起こしバキバキにしてしまう
近年、ニュースや健康番組でスマホ首という言葉を聞く事が多くなっている。
このスマホ首はスマホを見る為に下を向く事で首コリや肩こりが発生し、バキバキにしてしまうというものだ。
確かにスマホをはじめとした電子機器が普及し始めてから人は下を向く事が多くなった。
その影響で首や肩に負担がかかるようになったのは言うまでもない。
しかし、スマホによる影響は下を向いて操作することだけでは無い。
実はスマホを持つ腕の影響によって肩こりをより助長しているのだ。
前述した通り、肩こりを引き起こしやすい不良姿勢は「猫背」である。
スマホを「見る」だけでなく「持つ」だけでもこの猫背になりやすくなる。
これは身体の「運動連鎖」という現象が働くからだ。
例えば、スマホを持って操作をすると「長母指屈筋」と呼ばれる筋肉が酷使しやすい。
この「長母指屈筋」が酷使されてしまうと、つまり前腕が硬くなってしまうと回内方向(掌が内側に行く方向)へ誘導されやすくなる。
前腕を回内方向へ動かし続けるとどうなるか実験してみよう。
上記の写真で見ても分かるように、前腕が回内方向へ動くと肩甲骨が前へ移動し、最終的に猫背になってしまうのだ。
この一連の減少を「運動連鎖」と呼ぶ。
母指(親指)でスマホを使えば使うほど、「長母指屈筋」が酷使され、前腕が硬くなり、回内方向へ誘導される。
そして、最終的には不良姿勢である猫背を引き起こし、バキバキの肩こりを誘発してしまう原因となるのだ。
- スマホを使う。
- 母指(親指)で操作する。
- 長母指屈筋が酷使される。
- 前腕が硬くなる。
- 前腕の回内位が生じる。
- 腕の運動連鎖が起き、肩甲骨が前方へ移動しやすくなる。
- 猫背を招く。
- 肩こりでバキバキになってしまう。
※前腕の硬さによる肩こりの解消方法はこちらの記事にてご紹介しております。特にスマホを使いすぎている人はぜひご覧ください!
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歯の噛み合わせによって肩こりが悪化しバキバキになる
患者様のお身体のリハビリやお客様のお身体のケアを行なっているとある共通点に気がつく。
それは肩こりでバキバキになっている人の多くは「歯並び」が悪いということだ。
このようなデータがあるそうだ。
アライン・テクノロジー・ジャパン株式会社が、日本・アメリカ・中国に住む男女600人(各国200人ずつ)を対象におこなったアンケートでは、次のような結果が出ています。
■歯並びの悪い人が矯正治療をおこなった割合…日本21.3%(アメリカ50.0%、中国23.8%)
■矯正治療をしたいという意向がある人の割合…日本54.2%(アメリカ79.3%、中国85.3%)
■歯医者さんに相談した経験がある人の割合 …日本23.5%(アメリカ67.5%、中国74.5%)
引用:日本人の歯並びに対する意識や関心は?目立たない矯正器具も登場している!
日本人の歯並びに対する意識や関心、治療について次の傾向があると考えられます。
■歯並びの大切さについて高い意識や関心を持っているが、詳しく知っている人は少ない
■意識や関心が高い反面、実際に治療をおこなった人の割合は少ない
引用:日本人の歯並びに対する意識や関心は?目立たない矯正器具も登場している!
近年歯に対する意識は高くなってきているそうだが、歯の治療について詳しく知っている人はまだまだ少ないそうだ。
またアメリカに比べて、歯並びの悪さに対して、矯正を行うと言うこともまだまだ少ないとされている。
そして、物理的に考えても綺麗な歯並びで、しっかり噛み合えば、噛む力が圧力分散され、顎関節への負担も少なくてすむ。
もし、絶妙なバランスで噛み合っていた歯がかみ合わなくなったらどうなるだろうか?
このような文献を見つけたのでご紹介する。
生理学的には、咀嚼筋や舌顎関節、口腔粘膜、および歯根膜に存在する末梢感覚受容器による求心性情報のフィー ドバックによって咀嚼時の下顎運動が末梢性に制御されているものと考えられてきている。
いろいろなところに存在する感覚受容器が、下顎の動きを制御しているそうだ。
つまり、一つの歯が低くなれば歯根膜を介したフィードバックのメカニズムがくずれ、下顎の動きに不調をきたす。
そして想像どおり、噛む時の圧力バランスがくずれ、顎関節に多大な負担が生じてしまうはずだ。
仮に多大な負担を受けても、顎関節自体が強ければ、何も症状を出さない人もいるそうだ。
しかし、少なからず負担はかかっているはずである。
もし顎に負担がかかってしまうとどのような症状をきたすだろうか?
実は顎関節症の症状だけでなく、肩こりや頭痛、それだけでなくめまい、聴覚障害などの症状もきたしてしまうこともあるのだがな。
以下にそれを証明する文献をご紹介しておく。
咬合の乱れ によって聴覚障害・めまい・姿勢の異常・脳循環の異常あるいは、三叉神経や顔面神経の異常があらわれると推測している。
この文献より噛み合わせの乱れが、めまいや姿勢異常をきたす事があり、マウスピースなどのスプリントによって噛み合わせの乱れを治療した例を報告している。
迷路包内の前庭と骨半規管は、三次元的な位置感覚や方向感覚を維持するために最も重要な器官である。一般的にはこれらの器官において血行不良、腫瘍,外傷あるいは炎症が存在する場合に、ふらつきが生じると報告されている。
本症例は、顎関節内の変化が耳症状の原因あるいは誘因となる可能性を示唆しているものと解釈された。本症例によって、顎関節の構造変化と耳症状との関連について、一 つの肯定的事実が示されたと考えられる。
引用:顎関節関節円板の急激な復位に伴って船酔い様症状を呈した顎関節内障の1症例
この文献では、顎関節内の変化が耳の症状を引き起こす事を示唆した内容となっている。
以上の事から、歯の噛み合わせによって、肩こりでバキバキになるだけでなく、さまざまな症状を引き起こす事が分かる。
私自身も咬合障害による肩こりなどの様々な症状を経験をした事がある。
その経験から以下のように噛み合わせから生じる肩こりについて考察してみた。
- 歯の噛み合わせの異常が起きる。
- 歯根膜からのフィードバック情報が乱れ、下顎の動きがおかしくなる。
- 顎関節に不適切な力がかかる。
- 顎関節症の発症。
- 顎関節の腫れの影響で三半規管等に悪影響を及ぼす。
- 頭部の安定性を保つのが困難となる。
- 首こり、肩こりを始めとした全身症状が生じてしまう。
肩こりでバキバキになってしまうのは外部環境の影響もある
上記の
- 体幹や骨盤の動きの硬さ
- 前腕の硬さ
- 歯の噛み合わせ
は簡単に言えば、人間自身の内部環境に着目した3大原因である。
しかし、それ以外にも
- 仕事でのストレス
- 対人関係でのストレス
- 不規則な生活
- 疲労
などの外部環境の影響も肩こりでバキバキになってしまう原因となる。
このように肩こりで常にバキバキになっている人は、身体の状態に目を向けつつ、自身の生活環境にも配慮をしていかなければ、ストレスや疲労などによって、肩こりが解消されないケースがあるので注意しよう!
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肩こりでバキバキになる3大原因のまとめ
今回は肩こりでバキバキになってしまう3大原因について解説した。
- 骨盤や体幹の動きが不足すると猫背などの不良姿勢になることが原因で、バキバキの肩こりを引き起こしやすくなる。
- スマホの使い過ぎなどで前腕が硬くなってしまうと「運動連鎖」によって猫背などの不良姿勢を引き起こす事が原因で、肩こりでバキバキになってしまう。
- 噛み合わせの不具合によって、顎関節に負担がかかることにより、頭部不安定を招く。その事が原因で、バキバキの肩こりを招いてしまう。
- 仕事や対人関係、疲労などの外部環境もバキバキの肩こりを引き起こす原因の一つである。
不思議と日本人は肩こりが多いとされている。
海外には肩こりという言葉がないとも言われている。
それは骨格の違いや生活環境の違い、国民性などの違いがあるからだそうだ。
だが、臨床(現場)でリハビリやお身体のケアをしているとやはり噛み合わせが一番の原因ではないか?と考えてしまう。
前述したように、日本とアメリカを比べて、歯並びが悪くて矯正した人は倍近くアメリカの方が多い。
歯並びが悪い中で嚙みあわせるのと、歯並びが良い状態で嚙みあわせるのとでは安定感がどちらが高いかというと、物理的に見てもやはり後者だ。
日本人とアメリカ人で肩こりの自覚症状の差はもちろん骨格的な問題もあるとは思うが、歯並びや噛み合わせの違いによって、日本人の方が頭部の不安定が生じやすくバキバキの肩こりを招きやすいのではないだろうか?
これはあくまでも私の予想である。
しかし、噛み合わせのトラブルで肩こりやめまいを経験した事が私としては、多くの方の身体のケアをしていて、身体の硬さや筋力では到底説明がつかないバキバキの肩こりもあると言う事は事実である。
骨盤や背骨、前腕を始めとした『身体』、噛み合わせなどの『歯』、生活環境や仕事環境の『外部環境』が肩こりでバキバキにしてしまう原因なのかもしれない。
訂正:2019/07/11