理学療法士の長尾です。今回の記事では、治っているのに「悪くなっていっている」気がする四十肩・五十肩拘縮期の実態について解説していきます。
四十肩・五十肩と聞くとどのようなイメージを思い浮かべるだろうか?
多くの方が、
- 40代50代の肩のこと。
- 肩が動かなくなる状態のこと。
- 動かすと肩が痛い状態のこと。
を想像されるかと思う。
そして、かなり甘い考えをされている方がたくさんいる。
そもそも四十肩・五十肩を病気と考えていないようだ。
簡単に四十肩・五十肩を説明すると、関節が硬くなってしまう病気である。
そして、肩が正しく動かないことによって、痛みがでしたり、夜中に痛みがでてしまうのだ。
そして一番厄介なのが、拘縮が強まる時期である。
拘縮というのは、簡単に説明すると肩の関節が治る過程で「硬くなってしまう」状態のことだ。
拘縮がすすむ時期は、だんだん肩の動きが制限されていくので、心理的に非常に強い。
組織としては、状態は良くなっている。
しかし、動きが制限されてしまうので日常生活で不便になってしまう。
不便になると治っていないのでは?と疑心暗鬼になるのだ。
そして、無理に動かしたり、ストレッチをしたりする。
そのことによって、拘縮した肩に負担をかけて、痛みがまた悪化するという負のスパイラルに陥いる。
しかし、四十肩・五十肩の拘縮期がどのようなものなのか?その特徴を知っておけば、肩が動かなくなっても焦って余計なことをしなくてもすむ。
そこで今回の記事では、治っているのに「悪くなっていっている」気がする四十肩・五十肩拘縮期の実態について詳しく解説していきますので是非最後までお付き合いください。
結論:四十肩・五十肩の拘縮期は治る過程で硬くなるもの。時間経過とともに動くようになるので安心なさい!
四十肩・五十肩になってしまい、肩が動かなくなる拘縮が起きてしまっても安心して欲しい。
なぜなら、時間経過とともに、必ず肩の動きは改善していくからだ。
まずそもそも四十肩・五十肩がどのような段階を経て治っていくかを知っておいたほうが良い。
具体的には、3つの時期を経て治っていく。
文献によれば、
定型的な肩関節周囲炎の臨床経過は3期に分類される。
疹痛と可動域制限が発生する痙縮期(発 症後0-2か 月)
結合組織の創傷治癒より見た肩関節周囲炎の病態と治療
疹痛と可動域制限が進行する凍結期(発 症後2-6か 月)
疹痛と可動域制限が緩解する緩解期(6か月-1年)であ る
簡単に解説すると、
- 最初の2か月(痙縮期・炎症期):痛みが強い・少し肩が動きづらくなる時期
- 2-6か月(凍結期・拘縮期):より痛みが強くなる・肩が動かしづらくなる時期
- 6か月‐1年(緩解期):痛みが改善していく・肩が徐々に動くようになる時期
四十肩・五十肩になってしまうと、炎症期と拘縮期の時に苦しむ人が多い。
なぜなら、前述した通り、組織は治っていっても、肩が動かしづらくなってしまうからである。
では、なぜ肩が動かしづらくなってしまうのだろうか?
それは肩の構造が特殊だからである。
肩はとても外れやすい
実は肩は骨だけをみるととても外れやすい構造をしている。
足首外れた!股関節外れた!という言葉は聞かないが、よく肩を外した、脱臼したという言葉は耳にするはずだ。
実際に肩の骨の構造を見てみよう。
上腕骨の球体(赤色)に比べて、受け皿となる肩甲骨(青色)がとても小さいことが分かるはずだ。
受け皿が小さいということは、ゴルフボールがピンの上にのっている状態のようなものである。
そのため、骨だけで見ると非常に外れやすい。
では、なぜ問題のない肩は外れないのだろうか?
肩を断面にしてみるとわかりやすい。
- 皮膚
- 肩甲骨
- 滑液包
- インナーマッスル
- 関節包
- 上腕骨
肩をミルフィーユみたいに例えると上記のようになる。
肩甲骨と上腕骨をつなぎとめているのは、主に第5層の関節包である。
今一度思い出してほしい。
四十肩・五十肩は関節の病気だということを。
つまり、関節包にトラブルが起きてしまう病気を四十肩・五十肩と呼ぶのだ。
骨どうしをつなぎとめる関節包が傷付いてしまうと肩が外れやすくなってしまう。
肩が外れると問題になるので、自然と治す過程で、関節包を硬くするのだ。
そうすれば、肩が外れなくなるからだ。
そのため、四十肩・五十肩は拘縮期になるに肩の動きが制限されて硬くなってしまうのだ。
このようにお伝えすると、一度硬くなってしまったら治らないのでは?と思われる方が多い。
しかし、語弊だ。
傷ついた関節包は治る過程で徐々に正常な組織に置き換わっていく。
そして、ゆとりある関節包になるので、肩の動きも9割程度までは回復してくる。
そのため、四十肩・五十肩だけだったら、そこまで心配しなくても大丈夫なのだ。
しかし、頭に入れておかなければいかないのは次の2つである。
- 肩が痛くなって拘縮の絶頂になるのが約6か月
- 正常な組織に置き換わって、ある程度動くようになるのは拘縮期が過ぎてから6~12か月
であるということ。
すぐには良くなることはないのだ。
ストレッチすれば柔らかくなるという問題ではないということを頭に入れていただきたい。
警告:拘縮期が絶頂の時に一番やってはいけないことは不安に駆られてストレッチをしすぎてしまうこと!
以上のことから、四十肩・五十肩は関節の病気で、治る過程でどうしても肩の動きが制限されてしまう理由が分かっていただけたはずだ。
しかし、人間はこのように説明を受けても、やはり不安になってしまうことが多い。
そして、その不安にかられて色々とやってしまいがちになる。
しかし、四十肩・五十肩になった時、この2点は絶対にやってはいけない。
- ストレッチ
- 強引に動かすこと
なぜなら、病気になっている関節包が再度傷付いてしまう恐れがあるからだ。
文献によれば、
拘縮期は肩関節包の線維化と肥厚が発生し,関 節包の容量が減少することにより疹痛が持続し可動域制限が進行する.これは,結合組織創傷治癒の リモデリング硬化期に相当すると考えられ,線維芽細胞と膠原線維が増殖し毛細血管が退縮する.関節包が脆弱化した時期に,過度な外的ストレスが加わると癒痕内の膠原線維が断裂し,新たな炎症が惹起することが知られている.繰り返す刺激により線維芽細胞が活性化して不規則な方向に膠原線維を合成し,慢性炎症となり関節包はさらに肥厚すると考えられる.
結合組織の創傷治癒より見た肩関節周囲炎の病態と治療
簡単に説明すると
- 四十肩・五十肩になっている関節包は非常にもろい組織になっている
- 負担を与えると関節包が再度炎症を起こしてしまう
- 繰り返し負担を与え続けるとより関節包が硬くなってしまう
つまり、四十肩・五十肩に対して強引なストレッチをやったり、痛みを伴うぐらい動かしてしまえば、逆に肩の動きが悪くなるのだ。
多くの方が、治したい焦りによってかえって症状を悪化させてしまっている。
では、どのように治したらよいのか?
そのポイントは
- 四十肩・五十肩の3つの時期に合わせたリハビリを行う
- 起きてほしくない癒着を予防していく
- 肩への負担を徹底的に減らす
ことである。
実は病気になっている関節包の治る過程に合わせて、しっかりとリハビリをしていくことが最善の策となるのだ。
何でもかんでもストレッチをしたり、強引に動かせばよいというわけではない。
もし初めて四十肩・五十肩になって、苦しんでいる方はぜひこちらの記事をご参考にしていただきたい。有料記事になっていますが、無料部分だけでも実践すれば、非常に負担の軽減となります。また、一般的な実用書にはない動画解説付きです。もし四十肩・五十肩を時期別にリハビリしていきたいと考えている人はぜひご活用していただければ幸いです。
-
【理学療法士監修】はじめて四十肩・五十肩なった人のためのリハビリパーフェクトガイド! - ZENLOG|60代以上の膝痛解決ブログ
この有料記事を読むと得られるメリット 3つの時期がある四十肩・五十肩の改善方法が全てわかる。 四十肩・五十肩が原因で起きている夜間痛の改善方法と夜の寝方を知ることができる。 四十肩・五十肩で肩が動かな
seitai-yawara.com
まとめ
今回の記事では四十肩・五十肩の闇である「悪くなっている」気がする拘縮期のつらい現状について詳しく解説しました。
POINT
- 四十肩・五十肩は関節包が病気になり、肩の動きがかならず制限されてしまう病気である。
- 肩の構造上、関節包が病気になると治る過程でどうしても硬くしないといけない。
- 関節包が修復されれば、徐々に肩の動きが良くなっていく。
- 焦りから多くの方がストレッチをやりすぎてしまうが、病気になった関節包は弱くなっているのでストレッチをやればやるほど症状は悪化する。
肩がどんどん動かなくなることは非常に怖いことである。
このまま動かなくなるのでは?と錯覚してしまうからだ。
しかし、安心していただきたい。
四十肩・五十肩は悪くなっているから、肩がうごかなくなっているわけではないのだ。
病気になった関節包は、構造上の問題でどうしても硬くなってしまう。
つまり、肩が動かなくなっているのは組織が改善してきている証拠である。
そのため、焦って色々なことをしない方がよい。
ストレッチや無理に動かせば動かすほど肩がより動かなくなってしまうからだ。
そのため、不安にかられず、いろいろな事に手を出さないように注意していただきたい。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
この記事がお役に立てば幸いです。