腱板損傷の原因を分かりやすく解説!

投稿日:2017年7月22日 更新日:

腱板損傷の原因アイキャッチ

肩の痛み

人体の中で一番不安定な関節は肩である。

その為、様々な外力の影響により肩にに負担をかけ損傷を招くことが度々ある。

有名なのが40歳を超えると発生しやすい「四十肩や五十肩」という病気だ。

それとはまた違うのだが、若年者でも投擲種目のスポーツをやっていると希に「腱板損傷」という病気を引き起こしてしまうことがある。

この腱板損傷は若年者だけでなく50歳以上の方なら4人に1人の割合でかかっていると言われている。

この病気は4つの筋肉の共同の腱である腱板が上腕骨と肩甲骨の肩峰と呼ばれる部位に挟まれ損傷してしまうものである。

そして実は腱板損傷になっても、気づいていない人が多い。

腱板損傷のうち、痛みがあるものは約35%。

痛みがないものは約65%。

つまり半数以上が腱板を損傷していても無症状で過ごされている。

もちろん痛みをひどく出してしまう方もいらっしゃる。

今回は当店でも来店される方が多い『腱板損傷』について、『腱板損傷とは?』『どんな原因で腱板損傷が発症してしまうのか?』について詳しく解説していく。

腱板損傷とは?どのような病気なのか?

腱板損傷になってしまうと以下のような症状が引き起こしてしまう。

  • 肩が痛くてあがらない。
  • 肩周りが腫れぼったくなってしまう。
  • 腕を横から挙げた状態で保持が出来ない。
  • 腕を横から挙げると80°~120°の付近で痛みが出てしまう。
  • 夜中の痛みで眠れれない。
  • 野球などの投擲動作をすると肩が痛む。

上記の症状が腱板損傷になった時の主な特徴的な症状である。

特に腕を横から挙げて、90°の位置に保持するのが困難で腕が下がってしまうとドロップアームサインが有名である。

また腕を横から上げると80°~120°の付近で痛みが出てしまうという「painful arc sign」も腱板損傷の時に出る症状だ。

painful arc sign

日本整形外科学会ではこの様な症状の事を腱板断裂(腱板損傷)と謳っている。

40歳以上の男性(男62%、女38%)、右肩に好発します。発症年齢のピークは60代です。
肩の運動障害・運動痛・夜間痛を訴えますが、夜間痛で睡眠がとれないことが受診する一番の理由です。

引用:日本整形外科学会 腱板断裂

これらの症状は肩の腱板と呼ばれる部分が損傷してしまうことによって現れる現象だ。

この腱板というのは肩を動かす上で非常に重要な筋肉となる。

その腱板について簡単に解説していく。

※柔YAWARAが動画の中で腱板損傷についてその概要を解説しております。YouTubeでは柔YAWARAによく寄せられるお身体のトラブルについて、それを解消するためのエクササイズを定期的に紹介しておりますので、是非チャンネル登録もよろしくお願いします。

肩の腱板について

肩の腱板は4つの筋肉から構成されている。

  • 棘上筋
  • 棘下筋
  • 小円筋
  • 肩甲下筋

棘上筋・棘下筋・小円筋

肩甲下筋

この4つの筋肉の共同の腱が「腱板」と呼ぶ。

腱板は前述した通り、肩にとって非常に重要な筋肉となる。

肩を動かすにおいて、まず腱板が機能しないと肩は動くことが出来ない。

腱板の作用によって、上腕骨(※二の腕の骨のこと)が肩甲骨に引きつけられ、肩が動く際の安定感を作ってくれる。

腱板の作用

この腱板が安定感を出し、三角筋と呼ばれる筋肉が協同して肩を動かすという働きをフォースカップルと呼ぶ。

フォースカップル

つまり腱板が損傷してしまうと、肩を動かす上で力のバランスが崩れ、まともに動かすことが出来なくなるのだ。

また肩を挙げたまま保持するのが困難になり、「ドロップアームサイン」や「painful arc sign」が生じてしまうのはこのためである。

野球などの投擲種目を行っている方は非常に致命的なトラブルとなってしまう。

もちろん中高年の方がかかってしまうと日常生活がかなり困難になってしまうので早急に治療を行った方がよいだろう。

腱板損傷の分類

腱板損傷には重症度の分類がある。

60歳以上では加齢による劣化つまり腱板の変性によって生じるものが多いそうだ。

その多くが完全断裂だと言われている。

また10~30歳代の若年者には不全断裂が多い。

腱板の損傷の分類をご紹介する。

完全断裂は以下の通りだ、

  • 小断裂:直径1cm未満
  • 中断裂:直径1cm以上3cm未満
  • 大断裂:直径3cm以上5cm未満
  • 広範囲断裂:直径5cm以上

完全断裂

また不全断裂(部分断裂)は以下の通りとなる。

  • 滑液包面断裂(表面断裂)
  • 関節方面断裂(深層断裂)
  • 腱内断裂

不全断裂滑液包面断裂

不全断裂関節包断裂

不全断裂腱内断裂

出典:関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション上肢 P50

腱板損傷の程度によっては手術が適応となる場合があるので、肩の痛みが酷い時は医療機関への受診をオススメする。

腱板損傷を引き起こす原因

腱板損傷は色々な原因が重なり合って生じてしまう。

肩自体の問題もあれば、身体の動きによる問題など様々だ。

ではなぜ腱板損傷を引き起こしてしまうのか?

それについて

  1. 肩自体の構造的な問題
  2. 体幹が肩に与える影響

という2つの観点から解説していく。

※こちらの動画にて腱板損傷を引き起こしてしまう2つの原因について解説しておりますので是非ご覧下さい。

肩自体の構造的な問題

腱板損傷を引き起こす原因が肩にある場合以下の2つがある。

  • 腱板の変性(劣化)
  • 肩甲骨の肩峰の形の問題

腱板の変性が腱板損傷を引き起こしている原因としてこのような文献を見つけたのでご紹介する。

加齢がコラーゲン量や力学的要素に影響を与えていることで腱板損傷を惹起させる一因である可能性を示唆する。

引用:棘上筋腱の退行性変化は腱板損傷メカニズムの一因になり得るか~コラーゲンに着目した免疫組織学的,分子生物学的分析~

つまり加齢によって、腱板は変性してしまい、力学的な力(物理的な負担)に耐えられず腱板損傷を引き起こしてしまうようだ。

また肩峰の形状に関してはこのような文献があった。

腱板損傷の発生にはcoraco-acromialarchの形態が重要であ り,特に肩峰の先端部分と鳥口突起の3次元的位置関係が重要であることを示唆する.

引用:腱板損傷の発生要因に関する解剖学的検討

これは肩甲骨の肩峰と烏口突起と呼ばれる肩甲骨の部位の距離が腱板損傷の発生に関わっているそうだ。

肩峰烏口突起間

特に肩峰は人によって様々なタイプの形をとっているので、腱板損傷を引き起こす原因として着目されている。

上記に付随して腱板と肩の動きについて模型を使用して腱板損傷が引き起こされる原因を解説していく。

腱板については黒いテープで再現している。

腱板を再現

まず肩はこの肩甲骨のカップの上で動いている。

肩甲骨

そして肩が動く時には、肩峰と上腕骨がぶつからないように動いている。

肩の動き

スムーズな肩の動き

しかし、加齢による筋肉の劣化や投球動作のしすぎで疲労がおきていると肩は適切な動きができなくなる。

この状態に陥ると肩峰と上腕骨がぶつかってしまう。

その為、その間にある腱板が損傷してしまうのだ。

腱板損傷の原因

※この状態のことをインピンジメント症候群と呼びます。インピンジメント症候群についてはこちらの記事にて詳しく解説しておりますので是非ご覧下さい。

インピンジメント症候群のセルフ治療|肩を動かせるようにしたいあなたの為に

年を重ねていくとだんだん肩を挙げるのが辛くなってくる。 ましてや痛みまで伴ってしまう方が非常にたくさんいらっしゃる。 パ ...

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実は上記で説明したのは肩だけに着目した時の理論である。

以下に体幹が肩に与える影響についても解説していく。

体幹が肩に与える影響

次に腱板損傷を引き起こす原因が身体の動きの場合は以下の通りとなる。

  • 体幹の回旋の可動性が低下している。
  • 体幹の伸展(反る動作)の可動性が低下している。

体幹は肩や肩甲骨の土台となる。

その為、体幹がうまく反ったり回旋することが出来なければ相対的に肩への負担が増大してしまう。

その事が原因で腱板損傷を引き起こしてしまうことがある。

例えば体が反らなければ、肩は上に挙がらない。

体幹が丸まっていると肩が挙がらない

また体が回旋しなければ手を後ろに出すことは不可能である。

むしろ無理に動かしてしまい腱板に負担をかけてしまい腱板損傷を招いてしまう。

身体が回旋しないと後ろに伸ばせない

つまり、身体と肩の動きは密接な関係がある。

体幹の可動域が悪ければ、必然と肩が動きすぎてしまい、肩だけに着目した理論のように、上腕骨と肩甲骨の肩峰が衝突し腱板に負担をかけることによって損傷してしまう。

この理論は若年者に多い野球肩にも同じことが言える。

体幹の動きがスムーズでない状態で投球を行ってしまえば、肩を過度に動かしてしまい、結果腱板に負担をかける事になる。

上記の内容をまとめると肩の腱板損傷を引き起こしてしまう原因は、肩の筋肉の加齢による劣化とともに、体幹の動きが悪くなってしまうからだ。

このようなメカニズムによって腱板損傷は引き起こされてしまう。

腱板損傷の原因についての知識があれば、不慮の事故以外は腱板損傷の予防が可能となるので覚えておこう。

※野球をされている方で肩の前方に痛みがある方はぜひこちらの改善方法の記事をご覧下さい。

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腱板損傷後の経過は?

私の臨床経験では、50歳以下でかつ炎症症状が長引かなければ、四十肩・五十肩の時よりも肩の動きが早く改善するケースが多い

また、痛みが強い腱板損傷の初期から、適切な管理を行っていけば痛みも残ることが少ない

ただ高齢になるにつれて、肩の組織の変性が強くなる為、回復に時間がかかる。

それに加えて『腱板断裂』へと進行してしまうと切れた筋肉を手術つなげるしかなくなってしまう。

もし腱板断裂になり放置していると1年経っても、肩の痛みや筋力が回復しないケースがあると報告されている。

参考文献:腱板完全断裂放置例の予後調査のPDF

上記の様に軽度な腱板損傷であれば比較的予後は良いとされている。

腱板損傷を治し方の概要

基本痛みが強い時は安静を取ることが大切である。

2~4週程度でひどい炎症が落ち着き痛みが落ち着いてくる。

4~8週にかけて肩の動きも改善していく。

そして8週以降には肩の筋力を改善していくことが大切となる。

このように腱板損傷を治す為には肩の状態を確認しながら改善させていかなければならないのだ。

※詳しい腱板損傷の治し方に関してはこちらの記事にて詳しく記載しているので是非ご覧下さい。

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まとめ

今回は腱板損傷の原因について詳しくまとめた。

POINT

  • 棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つの筋肉をまとめて腱板と呼ぶ。
  • 腱板損傷を引き起こす原因としては肩自体の問題や体幹の動きの低下によって肩に負担がかかるからである。
  • 腱板損傷も四十肩・五十肩と同様、しっかりと肩の時期に分けて改善させていく事が大切である。

中・高生の野球の投手や30代・40代の働き盛りの人など、年代にかかわらず腱板損傷になる可能性はある。

その原因として多いのは上記で説明した通り身体の動きの低下である。

世の中が便利になった反面身体を十分に動かさなくなってきたことによって体幹の動きが著しく低下している。

その弊害として肩への負担が増していると考えられる。

そのことによって生じた腱板損傷は必ずしも肩が動かなくなる病気ではない。

痛みや可動域に関しては腱板損傷後の管理の仕方次第で回復してくるケースが多いことを知っておいて欲しい。

長尾 龍男
この記事を書いた人 : 長尾 龍男

愛知県岡崎市在住。整体院柔YAWARAを設立した理学療法士。柔YAWARAにて関節のトラブル由来の肩こりや腰痛、膝の痛みのケアを提供しております。その傍、「理学療法士」として整形外科で培った知識を活かして、『障害の原因』や『予防方法』『身体のメンテナス・ケアのやり方』をこちらのメディアにてご紹介しております。僕の想いはただ一つ。【僕の技術によって皆様の「お身体」のトラブルが改善し、より良い状態になっていただく事。】 ※より詳しいプロフィールや僕の想いは運営者情報もご覧ください。

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