長年整形外科の分野で働いていると多くの共通点や原則的なものを見つける事ができます。
それはタイトルにあるように『人間の土台』骨盤は『運動の中継地点』ということです。
こいつ何言っているんだ?と思われるかもしれません。
例えば腰痛だとしても、腰だけにトラブルが出ているのではなく、かなりの確立で足にもトラブルが生じています。
つまり家で例えれば、家が身体、土台が足となります。
その土台部分つまり基礎部分がおかしくなっている事が多いのです。
加えて、骨盤周囲にもトラブルを出している人も非常にいます。
骨盤周囲のトラブルは腰痛だけでなく、肩や膝などの上下半身のトラブルに密接に関わってくるようです。
今回の記事では肩こりや腰痛などの痛みが起きている場合、その場所以外も目を向けて改善させていかなければならないという私が臨床(現場の経験)で発見したケアの原則的なものを簡単に解説していきます。
治療の原則とは?
まず物事には何かしら変えられない原則が存在しております。
家で例えれば、柱を組まなければ、形が作れないなどがそうです。
人間の身体を改善させる為にも「原則」と言うものがあるのは間違いない。
ただ人間という存在は解明されているようで、解明されていないのが事実です。まるでブラックボックスの様なものですが、その中でもやはり原則的なものを見つける事ができます。
これはセラピストによって多少の違いがあると思います。
なぜなら、人間自体がブラックボックスだからです。解明されていなければ、アプローチ方法なんて多数出てくるのも当然です。
ですが、多くのセラピストが原則的に着目している事が多いのが、「筋肉」や「筋膜」です。
私的にはこれには異論があります。アプローチすべき対象ではないと感じております。
私が今まで10年間臨床で経験してきて、治療の原則に置いているのが『関節』です。
なぜなら、人間から関節をとってしまえば、動く事ができません。しかし、筋肉をとって骨だけにしても人間は動く事ができるからです。
これはわかりやすく例えれれば、骨は車のボディー、関節は歯車、筋肉はエンジンとすればどうでしょう?
筋肉というエンジンをとっても、車は動きますよね?でもエンジン積んでいても歯車が無ければ動きませんよね?それと同じなのです。
つまり、身体が硬くなっているのに対して、筋肉にアプローチしても、関節という歯車が動かなければ、硬さは取れないんですよね。
多くのセラピストがここに気付いていないように感じます。
そして、関節のトラブルは筋肉の硬さとして現れる。筋肉に不用意に刺激を与えれば反射が起きて硬くなるという原則も理解されていない様です。
関節のトラブルを知らせるのが筋肉とも言えます。言い換えれば、筋肉は反応器として扱わなければなりません。
運動器を改善させてお客様のお身体の動きを良くしていく為には、原則として「関節」にアプローチしていく必要があるのです。
そして1番まず最初に着目すべきは、運動の中継地点である骨盤・下位腰椎の存在です。
そして、次に身体の土台となる足もチェックしていくことが大切です。
これは、一つの原則として知っておいた方が良いことです。
以下に骨盤・下位腰椎と足のケアの必要性について解説していきます。
骨盤は運動の中継地点だ!
人間が手足を動かす際は必ず骨盤・下位腰椎周囲が活動します。
これは必ずです。
ここの活動が悪くなると上肢下肢の動きは悪くなります。
つまり、骨盤・下位腰椎周囲のトラブルが生じてしまうと、力の伝達が悪くなってしまいます。
イメージとしては、力という電車があり、体中にその力を走らせるための線路が張り巡らされていると考えてください。
その中間地点である骨盤・下位腰椎周囲が壊れてしまうと、中間地点の線路が壊れてしまっているのと同じ事なので力という電車が走ることができなくなってしまいます。
その事により上下肢の動きも悪くなってしまうのです。
動きが悪くなれば、それだけ上下肢に負担がかかることになります。
そうなれば、四十肩や五十肩になったり、膝の痛みが起きやすくなります。
それに対して、肩だけのケア、膝だけのケアを行なっていても、なかなか改善が難しい場合があります。
そのようなケースの場合はやはり上下肢のトラブルだけでなく、骨盤・下位腰椎周囲つまり力という電車が走る線路の中間地点のケアが大事になってくるのです。
肩や膝の痛みの場合はかなりの確率でこの中間地点である骨盤・下位腰椎周囲にトラブルが出ている事が多いです。その為一番最初にそちらの方に着目する必要があります。
足は人間の土台である!
冒頭で家に例えると足は基礎・土台であるとお伝えしました。
これはまさにその通りです。
ましてや人間はほかの動物と違って、二足歩行を行っています。
皆さん当たり前のようにやっていますが、これは非常に高度な事なんです。
椅子を2本足で安定させることなんてまずできません。
ですが、人間はそれを可能にしております。
つまりそれだけ2本の足の重要性は高く、裏を返せば負担がかかりやすい部分でもあります。
想像してみてください。
田んぼの上に2億円の大豪邸を建てました。その後どうなるでしょうか?
誰もが2億円の大豪邸が沈む、傾く、壊れてしまうと想像すると思います。
そうしない為にも、しっかりとした基礎を作ってから豪邸を建てますよね?
人間もこれと同じなのです。
なまじ二足歩行で不安定なのに、土台である足がしっかりしていなければ、不安定なものを支える事ができません。
支えられないので、必然的に足より上に負担がかかってしまいます。
負担が集中すれば、組織が傷つき、終いには痛みを出してしまいます。
人間も物質なので家と同じなのです。
前述したように、上下肢や腰などに痛みが出たとき、その部位の改善を目指しながら、力の線路の中間地点のケアも行なっていってもなお痛みが消えない場合はやはり土台である「足」にもトラブルが出ている可能性があります。
特に日本人の足に対する意識の低さは言うまでもありません。
こちらの文献ではこのように書いてあります。
日本の足の医療は100年遅れていると言っても過言ではありません。文明開化以降、人々が靴を履くようになり、まだ歴史が浅いことも影響していると思います。
先進国の中でも、靴を履く文化がまだ浅く、足に関する知識も100年遅れていると言われています。
またこちらの記事では、
久道医師によると、足の寿命は50~60年。すでにその年を超えているなら、足に何か起こっていると考えたほうがよい。痛みに気づかず生活している人も多いという...
引用:人間の足の寿命は50~60年 「足病医」が必要な二つの理由
体重を支えている足の寿命は60年程度だと示しております。
つまり、足がだんだん年齢と共に機能が低下しているにもかかわらず放置している方が非常に多いということを示しています。
いうならば、
- 虫歯なのに歯医者がない。
- 家の基礎が壊れているのに、基礎工事をする人がいない。
のと同じことなのです。
その為、身体の土台である足にも着目してしっかりケアを行わなければ、小さな足のトラブルでもいずれは身体のどこかにその負担が蓄積し、肩こりや四十肩、腰痛、膝の痛みなどのトラブルを招く原因となるのです。
身体の痛みは身体の原則を理解してキーポイントから改善させていくべきだ!
私が考えているケアの原則は
- 痛みが出ている部分が傷による炎症なのか?関節によるトラブルなのか?を見極める事。
- 力の線路の中間地点の骨盤・下位腰椎周囲にトラブルが起きていないかを見極める事。
- 身体の土台である「足」にトラブルが生じていないかを見極めること。
この3つを大切にしております。
どんな症状が来てもこの原則を元にケアを提供するように心がております。
例えば首が痛い症状のお客様が来たとします。
まず原則1の『痛みが出ている部分が傷による炎症なのか?関節によるトラブルなのか?を見極める事。』に基づいて、患部の状態を見極めます。炎症であるならば不用意に触らない。適切に安静を保つことを選択します。
次に原則2の『力の線路の中間地点の骨盤・下位腰椎周囲にトラブルが起きていないかを見極める事。』に基づいて、骨盤周囲のトラブルが出ていないかを検査していきます。
最後に原則3の『身体の土台である「足」にトラブルが生じていないかを見極める事。』に基づいて、足の機能をしっかりとチェックしていきます。
もしこれらの原則に当てはまらず、私では対応不可能と判断したら、ケアを提供せず、そのお客様に合う病院を紹介するようにしております。
まとめ
今回は【私の治療の原則】足は『人間の土台』骨盤は『運動の中継地点』について解説しました。
- 痛みが出ている部分が傷による炎症なのか?関節によるトラブルなのか?を見極める事が大切。
- 力の線路の中間地点の骨盤・下位腰椎周囲にトラブルが起きていないかを見極める事が大切。
- 身体の土台である「足」にトラブルが生じていないかを見極めることが大切。
- 身体の原則を理解してケアを行っていくことが大切。
何事にも原則があります。
これは人間の身体にも同じことが言えて、手あたり次第にテクニックを習得することに躍起になっているセラピストの方がいるがそれはその原則に目を向けることなく小手先のことばかり行っているのかもしれません。
一般の方にもこれは同じことが言えます。
色々な情報に振り回されて自分の置かれている状況が分からなくなっている場合が多いです。
人間の身体にはどのような「原則」があるのか?
一般の方もセラピストもその原則をまず理解して、ボディーリテラシーを高めていく必要性があります。