四十肩・腱板損傷の比較アイキャッチ

腱板損傷・四十肩

同じ肩の痛みでも「四十肩」と「腱板損傷」はどこが違うの?両者を比較して解説

この記事で分かる2つの事

  1. 「四十肩・五十肩」と「腱板損傷」の症状の違いについて
  2. 「四十肩・五十肩」と「腱板損傷」の病態の違いについて

年齢を重ねていくと自然と身体の節々に痛みが出てきます。

特に40歳以降になると上半身の筋力が低下すると言われている為、その影響で肩まわりで痛みを出すことが多いです。

その代表的なものが、『四十肩・五十肩』と『腱板損傷』。

「腱板損傷」は中年層だけでなく、投擲種目を行なっている若年層にも起きてしまうことが多いです。

「四十肩・五十肩」は圧倒的に40歳以降に発生しやすくなっております。

では、一体「四十肩・五十肩」と「腱板損傷」は何が違うのか?

そのような疑問をお持ちな方もいらっしゃると思います。

医療に従事している方でも理解されていないことが多いぐらい難しい疑問です。

その為、今回の記事では「四十肩・五十肩」と「腱板損傷」の病態と症状の違いについて一般の方にも分かりやすく解説していきます。

※柔YAWARAが動画内にて「四十肩・五十肩」と「腱板損傷」の違いについて分かりやすく解説しております。

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「四十肩・五十肩」と「腱板損傷」は「関節内の炎症」か「関節外の炎症」かの違いがある

「四十肩・五十肩」と「腱板損傷」の違い

  1. 病態:「四十肩・五十肩」は関節の内の炎症。「腱板損傷」は関節の外の炎症。
  2. 症状:両者とも「安静時痛」「運動時痛」がある。「腱板損傷」では40%が無症状。

以下に「四十肩・五十肩」と「腱板損傷・腱板断裂」の病態と症状の比較を解説していきます。

「四十肩・五十肩」と「腱板損傷」の病態比較

「四十肩・五十肩」の病態

  • 24%は激しい痛み、67%が軽い痛みが生じる。
  • 関節の拘縮が生じやすい。
「腱板損傷」の病態

  • 40%は無症状。
  • 四十肩・五十肩と比べて関節拘縮をきたすことが少ない。

※腱板損傷の方が痛みが出ない場合が多く、肩の動きが悪くなっても長い期間続かないと覚えておこう!

「四十肩・五十肩」と「腱板損傷」の症状比較

「四十肩・五十肩」の症状

  • 「安静時痛」と「動作時痛」がある。
  • 痛みの初期は「烏口突起」や「結節間溝」と呼ばれる場所で痛みがでやすい。
  • 痛みが長期化すると「クアドリラテラルスペース」と呼ばれる部位で痛みがでやすい。
  • 「腱板損傷」の症状

  • 「安静時痛」と「動作時痛」がある。
  • 痛みの初期は「肩峰の外側部分」と「三角筋の外側部分」に痛みがでやすい。
  • ※痛みの初期の症状は「四十肩・五十肩」では肩の前で痛みを出し、「腱板損傷」の場合は肩の外側で痛みを出すことが多い。

    「四十肩・五十肩」と「腱板損傷」を詳しく見ていく前に肩の構造を学ぼう!

    「四十肩・五十肩」と「腱板損傷」について解説する前に、まず肩の構造をお伝えしていきます。

    「四十肩・五十肩」で主に痛みが出る部位は下の写真の関節包と呼ばれる組織とその周りの筋肉です。

    関節包

    「四十肩・五十肩」の初期は下の写真の「烏口突起」や「結節間溝」と呼ばれる部分で痛みが出てしまいます。

    烏口突起と結節間溝

    鎖骨と烏口突起

    「四十肩・五十肩」が酷くなると下の写真の「クアドリラテラルスペース」に痛みが生じてしまいます。

    クアドリラテラルスペース

    クアドリラテラルスペース

    「腱板損傷」や「腱板断裂」は「棘上筋」「棘下筋」「小円筋」「肩甲下筋」の4つの筋肉の共同腱の部分の傷のことを指します。

    下の写真が腱板で、この場所で傷がついたり、加齢による劣化で断裂が起きると6割の方で痛みを出してしまいます。

    腱板

    棘下筋

    「腱板損傷」の初期は下の写真の「肩峰」の外側部分と「三角筋」の外側部分で痛みが出てしまいます。

    棘上筋と三角筋

    三角筋下滑液包

    以下にそれぞれの病態と症状について詳しくお伝えしていきます。

    「四十肩・五十肩」の病態と症状について

    「四十肩・五十肩」のポイント

    • 病態:肩の関節が炎症してしまう病気。
    • 症状:肩の痛みや肩の動きが悪くなる。

    まず「四十肩・五十肩」とはどのような病態で、どのような症状が出てしまうのか?

    日本では40歳以降に肩の痛みが出ることから俗称で「四十肩」や「五十肩」と呼ばれています。

    実は「肩関節周囲炎」と呼ばれる病名が正式名称です。

    文字通り肩の周囲の組織に炎症が起きてしまうという列記とした病気です。

    「四十肩・五十肩」は以下のような病態や症状が出てしまいます。

    「四十肩・五十肩」の病態は関節の「内」の炎症

    「四十肩・五十肩」は肩の関節包と呼ばれる組織(骨と骨をつなぎ合わせる袋だと思ってください。)を中心に炎症が出てしまっている状態です。

    痛みに関してはこのような文献で説明がありました。

    五十肩の炎症の程度は様々であり、24%が激しい痛み、67%が軽い痛み、9%が痛みがなかっ たとの報告があります。

    引用:五十肩と腱板断裂

    つまり、「四十肩・五十肩」になってしまうと2割強の方が激しい痛みに苦しみ、7割近くの方が軽い痛みに悩まれているとのことです。

    また同文献にて、

    40 歳以上で肩に痛みがあ る人の中で、整形外科を受診する人は 20%程 度と少なく、特に 40 歳・50 歳代の受診率は低 いと報告されています。この時期に肩の痛みを 生じた人は、「五十肩でしばらくしたら治るだろう」と考え放置していることが多いと思われ ます。しかし、五十肩の 40%に肩関節拘縮を 認めたという報告もあり、リハビリテーション(運動療法)を必要とすることが多々あります。

    引用:五十肩と腱板断裂

    と書かれています。

    これは7割近くの方は軽い痛みの症状で済んでいるので、「四十肩・五十肩」を軽視しがちになっていることを示しています。

    実はこの軽視している実態こそが治りを遅くし、重症化を招く原因となってしまいます。

    文献に書いてあるように「四十肩・五十肩」を軽視したことによって「拘縮」(関節が硬くなること)が起きて肩が動かなくなってしまうことが多いです。

    「四十肩・五十肩」の症状は『安静時痛』と『動作時痛』がメイン

    症状

    1. 安静時に出る肩の痛み。(安静時痛)
    2. 肩を動かした時に出る肩の痛み。(動作時痛)

    「四十肩・五十肩」の症状については上記のような二つの特徴がでます。

    安静時痛に関しては、文字通り何もしていなくても、肩に痛みが出ることを指しています。

    これは炎症が酷い初期に見られ、寝ている時にも肩に痛みがでて「睡眠障害」を招いてしまいます。

    動作時痛は、肩のなかの関節包と呼ばれる組織に傷ができて炎症が起きることで、肩を動かすと痛みが出てしまう状態を指します。

    特に肩のバンザイの角度が120°付近、だいたい目の高さで痛くなります。

    痛みを我慢しながら肩を動かし続けてしまうと炎症が悪化し肩がより動かなくなるので注意が必要です。

    動作時痛が出ている時は無理に動かさないようにしましょう。

    ※こちらの記事にて「四十肩・五十肩」の全期間のリハビリ方法を詳しく解説しております。「四十肩・五十肩」でお悩みの方は是非ご覧ください。

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    「腱板損傷」の病態と症状について

    「腱板損傷」のポイント

    • 病態:肩の関節の外にある「腱板」が傷ついてしてしまう病気。
    • 症状:肩の痛みや肩の動きが悪くなる。

    「腱板損傷」は「腱板」(肩のインナーマッスルと呼ばれる筋肉の腱)を構成する「棘上筋」「棘下筋」「小円筋」「肩甲下筋」と呼ばれる筋肉の共同腱が損傷している状態を指します。

    「腱板損傷」の状態がひどいと、『腱板断裂』という診断名がつけられます。

    『腱板断裂』まで発展してしまうと手術が必要になってきます。

    この「腱板損傷」の病態と症状について以下の通りとなります。

    腱板損傷の病態は関節の「外」の炎症

    「腱板損傷」は前述した通り、腱板と呼ばれる関節包を取り巻く筋肉の腱の損傷のことを指します。

    また「四十肩・五十肩」では肩の痛みの程度にかかわらず90%前後の人が出てしまうのに対して、「腱板損傷」や「腱板断裂」では4割が無症状であるとされています。

    文献では、

    五十肩と診断されている患者の約20%が実は腱板断裂であったという報告もあり、腱板断裂は好発年齢、症状が五十肩とよく似ているため五十肩と診断され放置されてしまう場合があります。しかも、腱板断裂は保存的治療では修復しないため、手術を要することがあります。ところが、長い間、腱板断裂を放置すると断裂を生じた筋肉が萎縮し腱板断裂を修復する手術が出来なくなってしまいます。

    引用:五十肩と腱板断裂

    と書かれています。

    つまり、「四十肩・五十肩」と診断されていても「腱板断裂」が本当の原因であったため、なかなか改善されない場合があるようです。

    私も「五十肩」と診断されて実は「腱板断裂」だった人のリハビリを経験した事があります。

    やはり長期間の炎症が続き、肩周囲の筋肉も萎縮しており、かつ肩の拘縮まで発生しておりどう仕様もない状態に陥っている状態でした。

    軽度な「腱板損傷」ならば手術は必要ないと思いますが、やはり完全に断裂している場合は自然治癒が見込めません。

    その為、早く手術をして肩をよい構造に戻してあげる事が大切です。

    医師ですら「腱板損傷」を見落としてしまう事があるにで、いかに肩の痛みを診断することが難しいかを物語っております。

    腱板損傷の症状は「無症状」「安静時痛」「動作時痛」の3つがある

    症状

    1. 腱板が切れていても肩に痛みが出ない。(無症状)
    2. 安静時に出る肩の痛み。(安静時痛)
    3. 肩を動かした時に出る肩の痛み。(動作時痛)

    「無症状」に関しては、腱板の一部が損傷していたり、断裂が起きていても全く痛みがない状態のことを指します。

    この状態に関しては、損傷の割合が小さい、もくはその他の筋肉が腱板の代わりに動きを補填している為。日常生活では気にならない場合が多いです。

    「安静時痛」に関しては、四十肩や五十肩と同じで、何もしていなくても痛みが出ている状態です。

    これは「腱板損傷」の初期に多く、損傷の程度によっては寝る時の痛みも出現します。

    「動作時痛」に関しても、四十肩や五十肩と同様、肩を動かした時に痛みが出現してしまう状態です。

    痛みが出ている初期は動きが悪くなってしまいます。

    しかし、「四十肩・五十肩」と比べると初期の痛みが過ぎると肩の動きの制限がすぐになくなる傾向があります。

    前述したように、「四十肩・五十肩」だと思い、長期間放置した結果、実は「腱板の完全断裂」が生じていたという事もなきにしもあらず。

    「腱板断裂」が生じていて、長期間の肩を動かせない状態に陥ってしまうと肩の動きが悪くなり、さらには肩まわりの筋肉が痩せ細ってしまいます。

    その状態になれば手術も不可能で、かつリハビリを行ったとしても結果が悪くなるのが目にみえます。

    その為、自己診断をせずに、痛い時はすぐに病院へ受診しましょう!

    ※こちらの記事にて「腱板損傷」の改善方法を詳しく解説しております。「腱板損傷」で方がつらい時は是非ご覧ください。

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    まとめ

    今回は「四十肩・五十肩」と「腱板損傷」の病態と症状を比較して、一般の方にも分かりやすいように解説しました。

    POINT

  • 「四十肩・五十肩」の場合は痛みの大小にかかわらず90%の確率で痛みが出る。
  • 「腱板損傷・腱板断裂」は40%が無症状。
  • 「四十肩・五十肩」の痛みの初期は肩の前のほうが痛くなる。
  • 「腱板損傷」の初期は肩の横のほうが痛くなる。
  • 「腱板損傷」は「四十肩・五十肩」に比べて関節の拘縮が起こりづらい。
  • 前述したように専門家でないのであれば、自己判断しないほうが賢明です。

    自己判断する人ほど自分の身体に対する認識が低く、より症状を悪化させてしまう傾向があります。

    肩に痛みがあって、おかしいと感じたらすぐに病院で診断してもらうことが大切です。

    そして何より、医療機関に勤めている人も、「四十肩・五十肩」や「腱板損傷」の違いを見極める力を持つように努力していただきたい。

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