- 四十肩・五十肩に合併しやすい胸郭出口症候群について
- 胸郭出口症候群の原因部位について
- 腋窩神経の絞扼障害について
「肩が挙がらない」で有名な四十肩や五十肩。
肩が挙がらなくなる状態はよほど重症化しています。
その状態になると非常に日常生活の動作が困難に。
それに加えて、長期間肩を動かせないと合併してしまう症状があります。
それが『胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)』と『腋窩神経の絞扼障害』。
『胸郭出口症候群』は長い間肩を動かせなかったことによる首や肩まわりの筋肉が神経を圧迫してしまうのが原因で鎖骨周りの痛みと腕全体の痛み、脱力間、痺れをメインとした症状です。
四十肩や五十肩が悪化しかつ『胸郭出口症候群』や『腋窩神経の絞扼障害』にもかかってしまうと非常に厄介な状態になってしまいます。
それを避けるためにはまず原因部位の特定が必要となります。
専門家ですら身体の部位を完璧に理解されている方は少なく、一般の方では身体のどこに筋肉や神経があるかなんてサッパリだと思います。
そこで今回の記事では一般の方にも分かりやすいように四十肩や五十肩に合併しやすい『胸郭出口症候群』と『腋窩神経の絞扼障害』の原因部位について、実際の身体に描いて解説しております。
※こちらの動画内で柔YAWARAが四十肩・五十肩に合併しやすい胸郭出口症候群の症状を実際の人に描いて詳しく解説しております。
四十肩と五十肩に合併しやすい胸郭出口症候群とは?
POINT
まず四十肩や五十肩、いわゆる「肩関節周囲炎」と呼ばれる症状は、何かしらの原因で、肩の内部に傷ができて痛みを誘発してしまう症状です。
そして厄介な症状としては痛みが長引いてしまうと肩の内部の組織が硬くなり、肩が挙がらなくなってしまうという症状もあるということです。
基本四十肩や五十肩になってしまったら、早い時期に肩の炎症を軽くしなければいけません。
多くの方がそのことを理解されていないため、痛くても動かしすぎてしまう傾向があります。
これは動かせば治るという盲信を抱いているからです。
ですが、これをやると確実に肩の動きは悪くなり、日常生活にも問題が生じます。
これらの症状に加えて「鎖骨の裏側を押したくなる」「腕全体が重だるい」「手が痺れる」などの症状を合併する事があります。
これの症状が『胸郭出口症候群』。
腕の重さは個人差はあるものの3〜5kgはあります。
肩が痛くなると力がはいらず腕がぶら下がる状態になります。
この状態が長期間続くと、首〜腕の関節や筋肉にトラブルが生じて硬くなってしまいます。
硬くなった首〜腕の筋肉が神経を圧迫するのが『胸郭出口症候群』となります。
胸郭出口症候群になってしまうと鎖骨まわりや腕にさまざまな症状をもたらしてしまいます。
※こちらの記事にて四十肩や五十肩の全期間のリハビリ方法を詳しく解説しております。そもそも四十肩や五十肩の改善方法が良く分からない方は是非ご覧になっていただき、改善方法を実践してみて下さい。
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胸郭出口症候群の種類と症状について
POINT
- 『胸郭出口症候群』には3つの種類がある。
- 鎖骨の痛み、腕の脱力感・シビレなどの症状がでる。
本来首からでる神経は筋肉の隙間をぬって腕に向かいます。
首から出てくる神経が「腕神経叢(わんしんけいそう)」。
その「腕神経叢」が筋肉によって圧迫されることを『胸郭出口症候群』と呼びます。
例えていうならば、本来、人(神経)が歩ける幅の道(筋肉の隙間)が狭くなって、人が通ろうとすると圧迫されて痛いというイメージです。
その隙間は身体の部位ごとに名称が以下の様に変わります。
胸郭出口症候群の種類
- 斜角筋症候群
- 小胸筋症候群
- 肋鎖症候群
これらを総称してものが『胸郭出口症候群』と呼ばれており、このような症状をもたらします。
胸郭出口症候群の症状
- 手指・腕の痺れ
- 手が冷たい感覚に。
- 脱力感。
- 鎖骨や胸の前が疼くような痛み。
理由としては、先ほどお伝えしたとおり神経の通り道が狭くなり、締め付けられているからです。
神経が圧迫されれば、痛みや痺れが出ます。
加えて神経と血管はならんで走っています。
その為、血管も圧迫され、痺れや手の冷たさという症状も出てしまいます。
文献によれば、こう書かれています。
※内容が難しいのでその下に簡単に説明しております。
胸郭出口症候群が斜角筋症候群、肋鎖症候群、小胸筋症候群等の種々のものを含みまた、症状が非常に多様性である事等により、その診断には困難性が伴うとともに充分なる注意を払わなければならないが、その目で見ると結構、症例も多いようである。胸郭出口症候群の診断において、より慎重に診断基準に補充し、われわれなりの診断基準 を考えてみた。
参考文献:胸郭出口症候群診断上の問題点
この文献を簡単に説明するとこのようになります。
文献の説明
- 『胸郭出口症候群』は様々な種類がある。
- 症状もたくさんある。
- 診断が非常に困難。
- 『胸郭出口症候群』になっている人は多い。
- 診断は注意深く行わなければならない。
私の経験では、ひどい肩こりと間違えている方が多い印象です。
医師でも診断が困難であるので、より『胸郭出口症候群』の原因部位を特定することは大切となります。
つまり胸郭出口症候群になってしまったら、どの場所で神経が圧迫されているのかを調べることが最優先ということです。
その為以下に『胸郭出口症候群』で知っておいた方が良い原因部位を実際の身体に描いてく解説しています。
参考:標準整形外科学 第9版 総編集 鳥巣岳彦 p743
『胸郭出口症候群』の原因部位を実際の身体に描いて解説
POINT
理学療法士などの専門家であれば、斜角筋や小胸筋などの筋肉をしっかりと触知できるようにならなければいけませんが、一般の方にはそこまでする必要はありません。
『胸郭出口症候群』で圧迫を受ける「腕神経叢」がどこにあるかを知っていただければ十分すぎます。
もしその神経の通り道のどこかに痛みやしびれ、うずく感じが出ていれば胸郭出口症候群の可能性もあるので覚えておきましょう。
特に四十肩や五十肩で長い期間、肩や首周りを十分に動かせれていない方にとっては大切なことです。
実際の身体に描く前がこちらです。
専門家でない限り、何がどこにあるかなんて検討がつかないと思います。
それを実際に触れる範囲で描いて解説していきます。
実際の身体に描いた肩や首の骨と筋肉
こちらが実際の身体に描いた首や肩回りの骨と筋肉となります。
描いたというよりかは、そこにあるものをなぞって書いたものです。
その為、書いてある下にはその通りの筋肉や骨が存在しております。
「腕神経叢」を実際の身体に描くと
赤色に塗られているのが今回一番のポイントとなる『腕神経叢』です。
その前後に「前斜角筋」や「中斜角筋」とよばれる筋肉が存在していますが、一般の方はそこまで知らなくていいので今回は書きませんでした。
だいたい鎖骨のまんなか付近に「腕神経叢」が存在していると思ってください。
太いひもの様にころころとしているのが特徴となります。
※触ると症状が悪化する恐れがあるのでご注意を。
「斜角筋症候群」で痛みやしびれ、違和感を出している方はこの部位でトラブルが起きています。
また鎖骨や鎖骨の下あたりが痛い場合は「肋鎖症候群」が疑われます。
ですが、この肋鎖症候群はほとんどの場合、骨の奇形(正常な形ではない骨のこと)による影響があるので、しっかりとしたレントゲンでの検査が必要になってきます。
またこちらには描いていないのですが、鎖骨の下に「小胸筋」と呼ばれる筋肉が存在します。
胸の前にあるのですが、その部分を押して痛みや違和感が生じるようなら、「小胸筋症候群」が疑われます。
「斜角筋症候群」や「小胸筋症候群」は筋肉の異常な張りが長い間続いた場合に引き起こされる症状となります。
腋窩神経の絞扼障害について
腋窩神経の絞扼障害とは?
腕神経叢が首から出て鎖骨の裏を通る入り口を「胸郭出口」と呼びます。
この周囲のトラブルのことを総称して『胸郭出口症候群』と呼びます。
前述した通り、首からでた神経は腕のほうへ向かいます。
腕のほうへ向かう時は脇にある筋肉や骨のすきまを通っていきます。
その脇の筋肉の通り道で神経が圧迫されて炎症を起こしてしまうのが『腋窩神経の絞扼障害』。
専門的な用語では「クアドリラテラルスペース(四辺形間隙)」と呼ばれる場所で起こるトラブルのことを指します。
『腋窩神経の絞扼障害』の症状としては以下の通りとなります。
症状
- 肩を挙げてしばらくするとじんわり痛くなる。
- 脇の方に違和感・痛みがある。
ある文献でも似たような症状を呈すると書かれてありました。
※分かりづらいので文献の後に簡単に説明しております。
「ズーンとするような」、「全体的にジーンと」以上のような表現で屈曲訓練直後、瞬間的な痛みではなく、放散痛がしばらく続くことが共通している。
屈曲の制限因子となりうる大円筋,肩甲下筋付近には、四辺形間隙(quadrilateral space:QLS)が存在し、組織間で腋窩神経を絞扼する可能性がある。
参考文献:疼痛により肩関節可動域訓練の難渋するケースの新アプローチ方法
文献を簡単に説明すると以下の通りになります。
文献の説明
- 肩のバンザイの動きを改善する訓練で時たまに、ジーンとした痛みが出ることがある。
- バンザイの動きをじゃまするのがクアドリラテラルスペースであり、その間には腋窩神経が通っている。
- バンザイでジーンと痛むときは腋窩神経が筋肉で締め付けられている可能性がある。
このクアドリラテラレルスペース(四辺形間隙)は「上腕骨」と「小円筋」「大円筋」「上腕三頭筋長頭」と呼ばれる筋肉からできる間隙のことをさします。
このスキマには『腕神経叢』からわかれた「腋窩神経」などが通ります。
四十肩や五十肩で長い期間に肩の動きが悪い状態でいる筋肉が異常に張ってしまいます。
その筋肉の張りによって、クアドリラテラレルスペース(四辺形間隙)で神経や血管が圧迫されてしまう症状が『腋窩神経の絞扼障害』。
症状が出るメカニズムは『胸郭出口症候群』と同じだと覚えておきましょう。
※もし四十肩や五十肩に加えて、この記事でお伝えした『胸郭出口症候群』や『腋窩神経の絞扼障害』のような症状が出ていましたら、まずはそちらの改善を図らないと四十肩や五十肩が改善していきません。『胸郭出口症候群』の改善方法に関してはこちらの記事で解説しておりますので是非ご参考にしてください。
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まとめ
今回は四十肩や五十肩に合併しやすい「胸郭出口症候群」と「腋窩神経の絞扼障害」の原因部位を実際の身体に描いて解説しました。
- 四十肩や五十肩が悪化し、長い期間、肩が動かなくなると二次的に筋肉が硬くなることで神経や血管を圧迫して『胸郭出口症候群』を引き起こしてしまう。
- 『胸郭出口症候群』は「①斜角筋症候群」「②肋鎖症候群」「③小胸筋症候群」の総称であり、鎖骨まわりの痛みや腕のしびれなどの症状が出てしまう。
- 四十肩や五十肩の合併症として『胸郭出口症候群』以外にもクアドリラテラルスペース(四辺形間隙)で神経が圧迫される『腋窩神経の絞扼障害』もある。
四十肩や五十肩にかかっていなくても、ひどい肩こりだと思っていたら実際は『胸郭出口症候群』や腋窩神経の絞扼障害』であったという事が非常に多いです。
この症状が四十肩や五十肩に合併してくると非常に改善が厄介になってしまいます。
まずは今回の記事にて身体のどこに神経と筋肉があって、痛みやシビレが起きているのかを知ることが大切です。
原因部位が分からなければ、治るものも治りません。
一般の方でもこちらの記事を見れば、神経や筋肉の場所がわかるので、もし四十肩に加えて、腕の痛みやシビレが起きていたらご参考にしてください。