- 四十肩・五十肩の原因部位について
- 肩の骨や筋肉の構造について
四十肩や五十肩になってしまい肩に非常に痛みが強い時、この痛みはどこの痛みなのか?疑問にもたれる方が非常に多いようです。
肩にはたくさんの筋肉を始めとした色々な組織がついている為、専門家でも判断できない人が多いのが事実です。
実際にここはこの筋肉だからと言っても、理解しがたいはずです。
その為、今回は私が現場で四十肩や五十肩、いわゆる肩関節周囲炎になってしまった方で痛みの訴えが多い部位を、実際の人にホワイトボードマーカーで書いて痛みの原因部位を可視化して皆様にご紹介していきます。
※柔YAWARAがこちらの動画内で四十肩や五十肩の痛みの原因部位を詳しく解説しておりますので是非ご覧ください。
四十肩・五十肩で確かめるべき骨と筋肉を実際の人に描いた
POINT
まず初めに肩に存在する骨や筋肉を可視化してご紹介していきます。
何もない部位に対して、このような筋肉が痛みが出ていると言っても、一般の方には理解しがたいと考えられる為です。
可視化するにあたっては、表面から触れる表層の筋肉や骨をマーカーでトレースしてご紹介していきます。
深層にある骨はしっかりと触知できないのでトレースは行いません。
その点だけはご容赦ください。
また肩の構造を可視化をすることによって、原因を特定しやすくなります。
原因が特定できれば、初期に行う安静方法がより明確になるため、予後がよくなります。
その様なこともあり、肩の組織の可視化は非常に有用であるので、専門家だけでなく一般の方にもご参考にしていただきたいです。
まずはトレースを行っていない肩がこちらです。
トレースを行い可視化した肩がこちらになります。
それぞれの部位の説明を行なっていきます。
まずは鎖骨・肩甲骨の烏口突起がこちらになります。
上腕二頭筋の長頭腱と短頭腱がこちらとなります。
肩甲下筋と腱板疎部がこの部分となります。
三角筋下と棘上筋がこちらとなります。
上記の部位は四十肩・五十肩になった時に確かめていかなければならないPOINTとなります。
四十肩・五十肩の4つの原因部位について分かりやすく解説
四十肩・五十肩に多い痛み
- 肩全体が痛い。
- 三角筋のあたりが痛む。
- 肩の前が痛む。
- 肩を動かす時に痛む。
前述した四十肩や五十肩になった時に調べておかなければならない部位を参考に痛みの部位を特定していきます。
痛みの部位の特定方法としては、『押す』『力を入れる』などの動作を行い状態を把握していきます。
特にこの記事では四十肩や五十肩になってしまった方に多くあらわれる症状を中心にご紹介していきます。
以下に上記の4つの原因部位について分かりやすく解説していきます。
肩全体が痛い時の原因部位
四十肩や五十肩の初期の肩に多い訴えとなります。
肩全体が痛い原因としては、肩関節には骨や靭帯、筋肉以外にも関節を動かす上で滑液包と呼ばれるものが存在しています。
これは筋肉と骨との摩擦を避ける為に存在しているのですが、その部分に腫れが生じていたり、関節自体に腫れが出ている為、まるで水風船のように肩全体がパンパンになっている状態に陥っているからです。
この症状を訴えられる方の多くは、肩を痛めて間もない方や肩の痛みがかなり長引いている方に非常に多いです。
通常肩関節は関節包や靭帯などによって締まっている状態なのですが、この状態に陥っている方は肩に生じている腫れにより肩がかなり不安定な状態になっております。
その為改善方法としては、まずは炎症を引かして腫れを減少させていく事を目的にした方が良いです。
※多くの方が四十肩や五十肩になった時、改善させようとしてストレッチを行い症状を悪化させています。どうしてストレッチをしてはいけないのか?こちらの記事にて組織学的にストレッチを行う事による身体の反応を詳しく解説しております。
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三角筋のあたりが痛む時の原因部位
これも比較的四十肩や五十肩の初期のほうでみられる訴えとなります。
上記で滑液包のお話をしましたが、実は三角筋の下にも滑液包が存在しております。
何かしらのトラブルでその滑液包に炎症が生じてしまい、三角筋の下で腫れを生じさせてしまい、三角筋周辺で痛みを出してしまうと考えられます。
実際に文献によれば、
三角筋下滑液包は前2者と同じ深さにあり,より遠位部で上腕骨と三角筋の間の滑動性を保障する。痛みの最盛期にはこれらの滑液包に水腫が存在する患者がいる。
引用:肩の運動療法の基本と実際
つまり、肩の痛みが絶頂の時はこの三角筋下滑液包に腫れが生じ、水が溜まってしまう可能性もあるという事だ。
この状態に関しても、やはり炎症による症状であるため、ある程度炎症が治まれば、痛みの訴えが軽減することが多い。
その為、負担をかけないような適切な管理を行っていくことが大切となります。
肩の前が痛む時の原因部位
肩の前には上腕二頭筋の腱や肩甲下筋の付着部、腱板疎部など様々な筋肉や靭帯などの組織が存在しております。
この肩の前が痛くなってしまうという訴えをする方に多いのが、上腕二頭筋の腱での炎症です。
上腕二頭筋は力こぶの筋肉として有名で、肘を曲げるときに使われる筋肉であると知られております。
実はこの上腕二頭筋は肩を挙げる時も活動をしております。
その為、何かしらのトラブルによって上腕二頭筋に負担がかかりすぎてしまうと、上腕二頭筋に存在する長頭腱や短頭腱に炎症が生じてしまい肩の前面に痛みを出してしまわれる方が多いようです。
もし上腕二頭筋の腱に痛みが出ているようでしたら、肩の安静だけでなく、肘への考慮もしなければなりません。
また上腕二頭筋長頭腱は肩の関節の中まで潜り込んでいるため、この部位の炎症が長く続いてしまうと後々肩が固まってしまう原因にもなる。
肩を動かすと痛む時の原因部位
肩を動かす際に肩の運動学をしっておかなければなりません。
肩全体でみれば天井まで180°近く万歳する場合、肩甲上腕関節だけでなく体幹の動きなどが生じております。
詳しく説明すると長くなってしまいますので少々割愛して、肩甲上腕関節だけでみれば、120°の動きをします。残りの60°は肩甲骨や体幹の動きだと言われています。
これを専門用語で肩甲上腕リズムと呼びます。
この可動域は肩甲骨の肩峰と呼ばれる部位と上腕骨の大結節がぶつからずに動くことにより成り立ちます。
ですが、体幹の動きの低下や何かしらのトラブルに陥っている状態で肩を無理に動かした際、腱板が損傷してしまう場合があります。
特に棘上筋と呼ばれる筋肉などが損傷を起こしやすく、これらの筋肉に損傷が起きてしまうと上記の肩甲上腕リズムに乱れが生じ、肩甲上腕関節で上腕骨の大結節と肩峰が衝突を起こしやすくなってしまいます。
この動きの乱れをインピンジメント症候群と呼びます。
この時、肩峰と肩甲上腕関節の間にある腱板を構成している棘上筋などが傷つき、肩に痛みを出してしまうのです。
つまり、四十肩や五十肩で肩の筋肉が劣化していたり、体幹の動きの低下が生じてしまうとこのインピンジメントを引き起こしやすくなり、痛みを発生させてしまうのです。
多くの方がこの痛みを我慢して無理に動かしてしまうことによって症状を悪化させてしまいます。
つまり、適切に安静を取ることができずに、肩内部の傷を広げ、治癒する過程で硬くしてしまうメカニズムが働き、肩の動きを悪くしてしまうのにつながってしまいます。
※インピンジメント症候群に関してはこちらの記事にて詳しく解説しておりますので是非ご参考にしてみてください。
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四十肩・五十肩を改善させるためには?
日本では四十肩や五十肩の呼び名が有名なのですが、正式には『肩関節周囲炎』という診断名がつけられます。
文字通り肩の周囲の組織に炎症を起こしてしまう病気です。
特に肩周囲の筋肉の劣化がおきだす40歳以降で多いので、四十肩や五十肩という俗称で呼ばれているようです。
文献では、このように記載されています。
肩関節周囲炎は,微細損傷などの炎症を起こすきっかけ→炎症反応の進行と収束→関節包や靭帯の瘢痕変性→二次性拘縮による組織変性と進行し、凍結状態に至る。炎症反応に拍車をかけることなく瘢痕変性を最小に抑えられたときは凍結状態には至らないが、不幸にも凍結状態に至った場合は、その後の自然寛解に半年~1年を要する。
引用:肩の運動療法の基本と実際
上記の内容を簡単に解説すると、以下の通りとなります。
簡単文献解説
- 四十肩や五十肩のきっかけは肩内部の微細な損傷による炎症です。
- 炎症が続くと関節包や靭帯が硬くなり、肩の可動域が悪くなってしまいます。
- 初期に炎症症状をひどくすることなく最小限の炎症でとどめておけば、肩がまったく動かなくなることはほとんどありません。
- もし四十肩や五十肩で痛みが長引き、まったく肩が動かない状態に陥ってしまうと自然に治癒するまでに1年近く必要になってきます。
その為、四十肩や五十肩を改善するためには時期に応じて慎重に行っていく必要があります。
※こちらの記事にて四十肩や五十肩の痛みが強い時期から肩が動かなくなってしまった時期までのリハビリ方法について詳しく解説しております。四十肩や五十肩でお悩みの方は是非ご覧下さい。
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四十肩・五十肩の痛みの原因部位まとめ
今回は四十肩や五十肩になられた方で多く訴えられている原因部位について、実際の人の身体に書いて可視化したものをご紹介しました。
- 肩全体が痛い場合は肩関節内部や滑液包に炎症が起き腫れている状態である。
- 肩前面の痛みは多くの場合、上腕二頭筋腱や腱板疎部での炎症が生じている。
- 動かした時の肩の痛みは、肩内部の傷とくに腱板の傷により正常な動作が行えず、インピンジメントが生じている為ため。
四十肩や五十肩の初期は腫れが強く、押しても痛みがよく分からない部分は多いです。
ですが、腫れが引いてくると痛みの原因部位が明瞭になってきます。
この痛みの原因部位が特定できると適切に安静にする為の方法が明確になる為、よほど変な事をしなければ予後が良いです。
ですが、原因部位が特定出来ずにどこがいけないんだろう?と暗中模索していると中々回復することが出来ずに悪化してしまうケースがあります。
原因部位を特定する為に是非上記でご紹介した部分をご参考にしていただければ幸いです。