- マラソンを長く続けたい人。
- マラソンやランニングで膝に痛みが出てしまう人。
- 長期に渡って膝に痛みが出てしまっている人。
今回は当店の公式サイトリンクにこのようなご相談をいただきました。
昨年の秋頃から、右膝の内側にひっかかるような痛みがあります。
12月にかかりつけの整形外科に行き診てもらいましたが骨には異常はありませんでした。
その後も3月フルマラソンへ向けてのトレーニングはしてましたが、痛みは引くことはありませんでした。
完走後も痛みは引かず、思いきってセカンドオピニオンのつもりでちがう整形外科に行ってみました。
結果は“変形性膝関節症”。
12月の頃は異常はなかったと思われ、この時は症状がはっきり出てると言われました。あと“完治はしません”とも言われました。
『変形性膝関節症…完治しないものなんでしょうか?
この先もマラソン続け、記録も狙いたいと思ってます。
痛みを楽にするストレッチやテーピングなどあったらおしえていただけませんでしょうか?
という内容のメールです。
誠にありがとうございます。
- 痛みを楽にしたい。
- 新たなる記録を作りたい
とのことですので、実際には診ておりませんが、少しでも役に立てれば幸いだと思いこちらの動画を作成しました。
まずこちらの動画で、この方(A様)の疑問や膝の痛みを改善する為の方向性や考え方について説明していきます。
その中でわかりづらくなるのでPOINTを押さえながら解説していきます。
次回の記事で、A様の膝の写真を踏まえてどのような対策が取れるのかを解説してくのでよろしくお願いいたします。
※動画でご覧になりたい方は下記の動画を御覧ください!動画の中でランニング中の膝の痛みに関する考え方を解説しております。YouTubeでは柔YAWARAによく寄せられるお身体のトラブルについて、それを解消するためのエクササイズを定期的に紹介しておりますので、是非チャンネル登録もよろしくお願いします。
マラソンランナーの膝の痛みで考えないといけない事
マラソンランナーの膝の痛みに関して、まず2つの事を考えないといけません。
- 一つが「心肺機能について」
- もう一つが「骨・関節・筋肉」
についてです。
- 「心肺機能」=走る為のエネルギータンク
- 「骨・関節・筋肉」=動く為のモーターやギア
だと思ってください。
この方に関しては「骨・関節・筋肉」つまりモーターやギアにトラブルが生じてしまっている状態です。
結論として、
膝は確実に休ませて自然治癒を促した方がよいです。
思い切ってランニングの動作は中止したほうが良いです。もしくは負荷量をかなり減らした練習にしていくべきです。
ここでランニングを中止してしまったら、年齢的に戻すのが大変じゃないか?と思われるかもしれません。
確かに、エネルギータンクである心肺機能は低下してしまうかもしれません。膝周りの筋肉が落ちてしまうかもしれません。
ですが、休ませなければ、膝というモーターやギアが確実に壊れ、近い将来再起不能になるかもしれません。
この問題を解決するには、
- エネルギータンクである心肺機能を鍛える。
- 膝というモーターやギアを休ませる。
という事が必要不可欠になってきます。
つまり、何が言いたいかというと、
ランニングはやめるけど、別運動で心肺機能を鍛え、 ひざへの負荷を減らす。
もしくは低強度のランニングの練習に変更していく。
という考えを持たなければ痛みに関しては少し難しいと考えられます。
日本人のランナーの方には動けば治ると考える人が多すぎる
動けば治ると考えられている人が多いのですが、組織は動くことによって傷が付きます。
しかし、それでも痛みが出ないのは、自然に治癒している部分が上回っている為です。
この方の場合、高い目標をお持ちなので、一生懸命に練習をされています。
それが仇となって、自然に治癒する力よりも組織の破壊の方が上回ってしまい長期的な痛みを引き起こしていると考えられます。
その為、膝に関しては休ませていかなければならないことが容易に想像できます。
実際のメールのやり取りの内容を要約したものを踏まえて膝痛改善の為の考え方を解説していく
A様から頂いた内容の要約がこちらになります。
- 40代後半。
- 仕事で立って歩き回る事が多い。
- マラソンを行なっている。
- 上半期にサブ4を達成し、更なる高みを目指している。
- フルマラソンで3時間40分をきりたい。
という情報をいただきました。
先程も申したようにすごく目標を高くお持ちの方です。
症状に関しては以下の通りです。
- 昨年の秋頃から、『右膝の内側にひっかかるような痛み』がある。
- 同年12月にかかりつけの整形外科へ受診。→骨には異常はないと診断される。
- 上半期のマラソンへ向けてのトレーニングはしていた→痛みは引くことはなかった。
- 完走後も痛みは引かず、思いきってセカンドオピニオンのつもりで違う整形外科へ受診。→ 『変形性膝関節症』と診断される。
「変形性膝関節症」は完治しないものだが必ずしも膝に痛みが出るわけではない!
A様から
- 変形性膝関節症は完治しないものなのか?
- この先もマラソン続け、記録も狙いたい。
という疑問・要望をいただきました。
まず
変形性関節症について解説していきます。
変形性膝関節症とは、『老化に伴う滑膜性関節の退行性病変』と定義されています。
これは老化に伴い軟骨の摩耗や骨の変形していくという意味です。(※その変形や摩耗には個人差がある。)
例えば、「モーターやギアも使えば使うほど摩耗する」と同じだと考えよう。
変形性膝関節症の有病率については以下の通りです。
- 45〜65歳の年齢層における変形性膝関節症の有病率は25〜30%
- 65歳以上では60〜90%
つまり40代になると少なからず関節は変形してしまうという事を意味しております。
ここで勘違いしてはいけないのが、変形性膝関節症≠膝の痛みという事です。
もし変形性膝関節症=膝の痛みだったら、
変形性膝関節症=一生膝に痛みがある。=65歳以上の人は90%以上の人が膝が痛い。と言うことになってしまいます。
これはまず有り得ないです。
つまり、膝の関節が変形しているから、必ず痛みがあるというわけではないです。
痛みが出ている部分に負荷がかかって痛みが出てしまうのです。
変形がある人は変形がない人と比べて、負荷がかかりやすく痛みが出やすいだけだという認識を持っていただいたほうが良いです。
- 変形性関節症は進行性のため治るという事はない。
- しかし、必ずしも変形性膝関節症があるからと言って痛みがでるわけではない。
※こちらの記事に膝の内側が痛くなってしまう3大原因をまとめました。膝の内側の痛みの原因が知りたい方は是非ご覧下さい。
-
膝の内側が痛い!そんな時に知っておきたい3大原因のまとめ
この記事を読むと分かること 膝の内側の3大原因が分かる 「内側側副靭帯損傷」「半月板損傷」「鵞足炎」の場所と痛みの検査方法が分かる 膝の痛みにはいろいろな種類があります。 膝の内側が痛かったり、外側が ...
さらに詳しい質問によりA様の膝の痛みの原因と方向性を紐解いていく
情報が不足していたため、A様に下記の質問に答えていただきました。
回答も合わせて御覧ください。
Q1.どのような動作で痛みがでますか?
A1.立ち上がる時、ランニングの始動時、ランニング中
※だいたい2㎞くらいまで痛みがある。
※㌔5分10くらいで走っると、痛みがある。
※ランニング中の痛みは痛くて途中で止まるなどはない。
このことから力をつかう動作にて負担がかかっていることが予想できます。
Q2.上記の痛みは膝のどの部位に痛みがでていますか?
A2.膝の内側、時々お皿の下にも痛みがでる。
最初のメールに『右膝の内側にひっかかるような痛みがある』といった内容があった為、半月板の痛みを示唆できる。
加えてお皿の下にも痛みが出るということは膝蓋大腿関節のトラブルも示唆できる。
Q3.Q2.の痛みは押すと痛みがでますか?
A3.はい
※顔をしかめる程ではないが、ぼんやりと痛みがでる。
少なからず組織が損傷していると予想できます。
Q4. 膝が痛くない時はありますか?
A4. 座ってる時と運動していない時。
裏を返せば動作時に何かしらのトラブルで痛みがでる事になります。
Q5.膝を曲げ伸ばした時ゴリっとした音はありますか?
A5.いいえ
※屈伸でポキッと鳴ることはある。
しかし、痛む箇所を曲げ伸ばししてもゴリっとは鳴らない。
ここで半月板の痛みが強いなら、半月板の軋轢音が生じるはずです。
そのため、半月板の影響は少ないと予想されます。
Q6. 膝の腫れはありますか?
A6. いいえ 痛み始めてから、腫れたことはありません。
専門家が触ると少し腫れている事があるかもしれません。
その他にも、このようなご意見をいただきました。
痛み止め錠剤で痛みは最初より落ち着いた。
何かしら炎症疾患が考えられます。
㌔6分20のランニングなら右膝の痛みは無いわけではないが、“ペースが遅いなりの痛み”はあった。
膝を使うと痛みが出ることになります。
これらの質問を総合的に考えて、実際の写真を見てみてみましょう。
実際に痛みが出ている場所がこの部分になります。
もし仮に変形性膝関節症による膝の痛みであるなら関節部分に痛みがでるはずです。
しかし、写真の部分が痛いとのことでこれは鵞足3筋に相当する場所となります。
3D画像でも確認してみましょう。
場所から見ても鵞足3筋の中でも縫工筋のトラブルが考えられます。
ここでA様の現在の練習量について見ていきましょう。
ペース走 ㌔5分10~20 20~25㎞
ロング走 ㌔5分30~45 30~35㎞
スピード走 ㌔4分45~5分 8~12㎞
走る日は週に3~4日。ペース走、ロング走は隔週交代で行っている。
スピード走は週1回。
月間100~150㎞ほど走っている。
月間目標は200㎞。
以上のことから、練習量の過多により、膝特に鵞足を構成している縫工筋の炎症(鵞足炎)が生じてしまっている状態と予想できます。
そして、炎症が自然に治癒するよりも練習による負担が大きすぎるため組織が修復できず、痛みが長期的に続いていると思われます。
※鵞足炎になってしまった時の詳しい改善方法についてはこちらの記事をご参考にしてください。
-
「鵞足炎」かも!?ランニングすると膝の内側が痛みます!
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画像と問診から読み取れるA様の症状と今後の方向性のまとめ
上記をまとめるとA様の症状は以下の通りになります。
過度な練習により膝への負担が大きい為、鵞足部分の炎症(鵞足炎)が生じている。(特に縫工筋に)
そのため、A様が取るべき方向性は、
- 膝を休ませ、組織の自然治癒を促す。
- マラソンのパフォーマンスは落とさないように「他の運動に変更しトレーニングする」事や「軽度負荷のランニング」で心肺機能を維持し、膝への負担を減らす。
べきだと考えられます。
上記の理由としては、以下のとおりです。
ランニングを辞めた場合
- メリット:膝を休ませれる。
- デメリット:ランニング技術の低下。
別の運動(水泳や自転車)へと競技を変更してトレーニングした場合
- メリット:全身運動により心肺機能を強化が可能、膝への負担を減らすことができる。
- デメリット:ランニング技術の低下。
軽負荷のランニングにした場合
- メリット:ランニングの技術低下を防ぐことができる。
- デメリット:少なからず膝への負担がかかる。心肺機能の向上は望めない
これらのことを総合的に考えても、やはり競技を続けたいという強いモチベーションをお持ちなら、競技を完全に休むというよりかは別の運動(水泳や自転車)へと競技を変更してトレーニングしたり、軽負荷のランニングにして膝への負担を減少させるべきであると考えられます。
- 人間の身体は動けば少なからず組織に損傷が伴う。自然治癒力がその損傷を上回っていなければ痛みなく動くことができる。
- 人間の身体は動けば治るものではない。組織の損傷と自然治癒力とのバランスが大切である。
- ランニングなどで膝に痛みが長く続いている場合は、自然治癒力よりも組織の破壊が上回っている事が考えられる。そのため、練習内容や自分の身体にどのような負担がかかっているかを分析する必要がある。
- 膝の痛みに関して必ずしも変形があるから痛みがあるわけではない。何が原因で痛みが出ているのかを特定していく必要がある。
A様の膝に関しては年齢的に変形があるかもしれません。
しかし、痛みの場所や動作による痛みから考えられるのは鵞足炎が非常に濃厚です。
また仕事や練習内容から常に膝への負担がかかっていることから膝への相対的な負担を減らしていくことが大切であると考えられます。
次回はA様の膝の写真を踏まえてどのような改善方法が取れるのかをご紹介していきます。
またランニングで膝が痛くなってしまう方はぜひこのような考えを持った上で練習に取り組んでいただければ幸いです。
より長くマラソンを続けるためには何事も『バランス』が大切になってくるので。