- 「インピンジメント症候群」の症状について
- 「インピンジメント症候群」が発生してしまう原因について
肩を痛めた人なら『インピンジメント症候群』という言葉を聞いたことがあるはずだ。
このインピンジメント症候群とはどのような「症状」で何が「原因」で生じてしまうのかご存じだろうか?
結論から言うと、
インピンジメント症候群とは『肩甲骨と上腕骨と呼ばれる骨がぶつかることで、その間にある「腱板」と呼ばれる筋肉の腱が挟まれ、痛みが生じてしまう症状である。
『インピンジメント症候群』になってしまう原因は以下のとおりである。
原因
- 『腱板の劣化』によって肩が正常に動かなくなっている。
- 『体幹の硬さ』によって肩がしっかり動かなくなっている。
今回は肩の『インピンジメント症候群』の2つの原因と症状について詳しく解説していく。
※柔YAWARAが動画内にてインピンジメント症候群とは?どのような症状で何が原因なのか?について詳しく解説しております。YouTubeでは柔YAWARAによく寄せられるお身体のトラブルについて、それを解消するためのエクササイズを定期的に紹介しておりますので、是非チャンネル登録もよろしくお願いします。
肩の『インピンジメント症候群』の原因は「腱板の劣化」と「体幹のかたさ」だ!
肩の『インピンジメント症候群』原因はこの2つである。
2つの原因
- 肩の内部にある「腱板」の劣化
- 体幹のかたさ
この2つの原因について以下に詳しく解説していく。
肩の内部にある「腱板」の劣化が『インピンジメント症候群』の原因である理由
肩は骨を見ればわかる通り、非常に「不安定な関節」である。
肩甲骨にある「肩甲骨関節窩」と呼ばれるくぼみに対して、上腕骨頭(丸い部分)のサイズの方が大きい。
その為、「小さなカップ」の上で「上腕骨」が動くので非常にトラブルがおきやすいのだ。
また肩を動かす際に重要な役割をしているのが『回旋筋腱板』(腱板)と呼ばれる『棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋』の4つの筋肉である。
これらの筋肉は、肩甲骨関節窩(小さなカップ)に上腕骨を押しつけ、肩がスムーズに動くようにする働きをしている。
しかし、これらの『腱板』は以下のような欠点がある。
腱板の欠点
- 加齢による劣化が起きやすい。
- 野球などの投球によって「腱板」が摩耗しやすい。
「腱板」の劣化や摩耗が起きてしまうと「腱板」が機能しなくなる。
その状態ではすぐに肩のまわりの筋肉や関節が硬くなってしまう。
肩まわりの関節がかたくなれば、肩を正しく動かすことが難しくなるのだ。
つまりは、肩のインピンジメントが生じやすくなってしまうという事になる。
肩内部の動きを見るとこのようなイメージとなる。
ここまでのPOINT
- 肩は不安定な関節である。
- 「腱板」が劣化したり摩耗すると肩まわりの筋肉がかたくなり、『インピンジメント症候群』を引き起こしやすくなる。
体幹のかたさが『インピンジメント症候群』の原因である理由
上記で解説した「腱板」の劣化や摩耗以外にも『インピンジメント症候群』を引き起こしてしまう原因がある。
それが、『体幹のかたさ』である。
『体幹のかたさ』が肩の動きと関係があるのか?と疑問に思われる方がいるかもしれないが、実は密接に関係している。
実際に試していただければわかる。
「背中を丸めた状態でバンザイをする」のと「背中を伸ばした状態でバンザイする」のを比較すると肩の動きに大きな違いが出ていることがわかるはずだ。
これは体幹の回旋動作を制限しても同様に肩があがらなくなる。
つまり、体幹がまず動かなければ肩の動きも悪くなってしまうのだ。
その状態でより上にあるものをとろうとすると、肩に負担がかかってしまう。
肩が動くためには体幹がやわらかく動かなければいけないという大前提があるのだ。
以下の3つの例を見てみよう。
例1:身体が反れない状態で高い所のものを取ろうとすると…
肩に負担がかかり『インピンジメント症候群』を起こしてしまう。
例2:身体がひねれない状態で後ろの物を取ろうとすると…
これもまた肩に過剰な動きが要求されて『インピンジメント症候群』を引き起こしてしまう。
例3:体幹の可動域が低下しているのにボールを投げようとすると…
肩に過剰なストレスが加わり、『インピンジメント症候群』を引き起こしてしまう。
つまり、体幹の動きが悪ければ肩の『インピンジメント症候群』を引き起こし「腱板」を傷つけてしまう原因となってしまうのだ。
ここまでのPOINT
- 体幹の柔軟性がなければ、肩が無理をし過剰な負担がかかってしまう。
- 結果インピンジメント症候群を引き起こす。
『インピンジメント症候群』は肩を動かした時の痛みがメインの症状だ!
肩の『インピンジメント症候群』の症状は以下の通りとなる。
症状
- 肩を動かした時の痛み。
- 特に肩を120°付近まで持ってくると痛みが出やすい。
そもそも『インピンジメント』という言葉の意味は、
衝突。激突。
引用:コトバンク
また『症候群』という言葉の意味は、
同時に起きる一連の症候のこと。原因不明ながら共通の病態(自他覚症状・検査所見・画像所見など)を示す患者が多い場合に、そのような症状の集まりに名をつけ扱いやすくしたものである。
引用:ウィキペディア
つまり、『インピンジメント症候群』とは肩の骨である「上腕骨」と「肩甲骨」が衝突してしまうものである。
そして、その原因が不明もしくは多くありすぎて特定できていない状態の症状だ。
また、Neerという人物は肩の『インピンジメント症候群』をこのように定義づけている。
肩の『インピンジメント症候群』とは、肩を挙げていく過程で引っ掛かる感じや痛みが生じてしまう症状である。
肩峰の前下面と大結節や腱板付着部が衝突する事で、その間にある腱板(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)などにさまざまな障害をひき起こす
とした。
つまり、簡単に説明すれば「肩甲骨」と「上腕骨」がぶつかる事で、間にある筋肉の腱が挟まれ、損傷してしまう症状を意味している。
以下の筋肉が「肩甲骨」と「上腕骨」の間にある「腱板」を構成する筋肉である。
棘上筋・棘下筋・小円筋
肩甲下筋
またNeerは肩の『インピンジメント症候群』を3つの時期に分類をしている。
Neerの分類
- 第1期:腱板の浮腫と出血
- 第2期:繊維化と肥厚
- 第3期:腱板断裂と骨変化
その他、Biglianiは肩峰(肩甲骨の部位)の形態を3つに分けており(平面型・弯曲型・フック型)、その中でフック型が一番腱板断裂が多いと報告している。
またEdelsonは肩峰の傾斜角度が緩いものに腱板断裂が多いと報告している。
これらを簡単に説明すると肩甲骨の形も肩の『インピンジメント症候群』に関わっている問題だという意味だ。
肩の『インピンジメント症候群』を引き起こしてしまう原因は数多くあるので、原因をしっかりと特定して対処していくことが非常に大切となる。
参考:肩診療マニュアル 第3版 著者 橋本淳 信原 克哉 発行所 医歯薬出版株式会社 p29ー32、p95
参考:インピンジメント症候群
肩の『インピンジメント症候群』をの治すためには3つの時期に応じた対応が必要!
肩の『インピンジメント症候群の治し方としては、Neerが定義した3つの時期に応じた治療が必要である。
簡単に説明すると以下の通りとなる。
治し方の考え方
- 第1期:腱板の浮腫と出血の時期は、肩を安静に保つ事が大切となる。
- 第2期:繊維化と肥厚の時期は、肩の動きが悪くなるため、無理のない範囲で「体幹」「肩」を動かして改善を促す。
- 第3期:腱板断裂と骨変化の時期は、末期の状態のため手術が必要となる。
肩の『インピンジメント症候群』の3つの時期に応じた治し方についてはこちらの記事にて詳しく解説しております。
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まとめ
今回は肩のインピンジメント症候群の2つの原因と症状について解説した。
POINT
- 肩のインピンジメント症候群の原因に関しては、未だはっきりとしたものが発表されているわけではないが、筆者の臨床経験により肩の内部に「腱板の劣化」や「体幹のかたさ」によるものが多い。
- 肩のインピンジメント症候群とは、肩を挙げていく過程で引っ掛かる感じや痛みが生じてしまう症状である。
- 肩のインピンジメント症候群の治し方については、Neerが定義した3つの時期に応じた対策が必要である。
肩は構造的に非常にトラブルが生じやすい関節である。
『インピンジメント症候群』の多くは関節や筋肉の劣化によるものだ。
若年者でも野球などの種目を行なっていると発症してしまうケースがある。
『インピンジメント症候群』の初期であれば、しっかり管理していけば、高確率で改善が見られる事が多い。
しかし、多くの方が『痛くても動かせば治る』などと言った間違った考えを持っているが故に症状を悪化させているのも事実である。
もしインピンジメント症候群になってしまったら、無理をして動かさず、適切な時期に適切に管理を行なっていく事が非常に大切だ。