胸郭出口症候群の原因部位アイキャッチ

腱板損傷・四十肩

【身体に描いて解説】四十肩で腕がシビレてしまう原因は『胸郭出口症候群』の合併だ!

長尾 龍男

理学療法士歴15年。(整形外科勤務6年/整体院経営9年) シャイな子育ておじさん。 2017年健康ブログ開設/ブログ最高閲覧数50万。 2018年YouTubeチャンネル「柔YAWARA」開設/現在チャンネル登録者5万人/ 100万回再生動画あり。 文献の情報及び自身のリハビリ経験を元に、「膝の痛み」×「メンタルヘルス」について発信しております。

この記事を読むと分かること

  1. 四十肩・五十肩に合併しやすい胸郭出口症候群について
  2. 胸郭出口症候群の原因部位について
  3. 腋窩神経の絞扼障害について

「肩が挙がらない」で有名な四十肩や五十肩。

肩が挙がらなくなっている状態は、かなり重症な状態です。

そして、日常生活の動作が非常に困難になります。

加えて、長期間肩を動かせないと次のような合併症が起きてしまうのです。

それが『胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)』『腋窩神経の絞扼障害』

『胸郭出口症候群』は長い間肩を動かせなかったことによって、首や肩まわりの筋肉が神経を圧迫してしまう病気です。

主な症状が鎖骨周りの痛みと腕全体の痛み、脱力感、そしてしびれとなります。

四十肩や五十肩が悪化しかつ『胸郭出口症候群』や『腋窩神経の絞扼障害』にもなっててしまうと非常に大変です。

その大変な状態を改善させるためには、まずはどこが原因となっているのか?を特定することが大切です。

そこで今回の記事では一般の方にも分かりやすいように、四十肩や五十肩に合併しやすい『胸郭出口症候群』と『腋窩神経の絞扼障害』の原因部位について、実際の身体に描いて解説していきます。

関連動画:四十肩・五十肩に合併しやすい「胸郭出口症候群」と「腋窩神経絞扼障害」を可視化して解説

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※初めて四十肩・五十肩になってしまった方に向けて、四十肩・五十肩の全期間のリハビリ方法についてこちらの記事にて詳しく解説しました。原因~治療期間、そしてどのようにリハビリを行って改善していけば良いのか?についてまとめております。理学療法士の知識および現場での経験を踏まえて制作した実践的な内容です。四十肩・五十肩でお困りの方はぜひこちらの記事をご参考にしてください。

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そもそも四十肩と五十肩に合併しやすい胸郭出口症候群とはどんな病気なのか?

胸郭出口症候群とは、首や肩周りの筋肉が神経の通り道を圧迫して、痛みやシビレを引き起こしてしまう病気です。

そして、四十肩・五十肩と合わせて起きることが多いのを経験します。

四十肩・五十肩は、「肩関節周囲炎」と呼ばれています。

症状としては、何かしらの原因で肩の内部に傷ができ、肩に痛みがでてしまいます。

そして、厄介なことに肩の痛みが長引くだけではなく、肩の内部の組織が硬くなり、動きづらくなるという症状もあるのです。

基本、四十肩や五十肩になってしまったら、早い時期に肩の炎症を軽くしなければいけません。

多くの方がそのことを理解されていないため、痛くても動かしすぎてしまう傾向があります。

「肩を動かせば治る」と盲信している人が多いからでしょう。

しかし、肩が痛い時期に動かしすぎると、間違いなく肩の動きは悪くなります。

そして、日常生活にも問題がおきるのです。

さらに、肩が動かないのに加えて「鎖骨の裏側が痛くなる」「腕全体が重だるい」「手がしびれる」などの症状を合併する事があります。

この症状が『胸郭出口症候群』です。

腕の重さは3〜5kgあります。

肩が痛くなると、腕に力がはいらず、ぶら下がる状態になるのです。

腕が肩で支えられない状態が長期間続くと、首〜腕の関節や筋肉にトラブルがおきて、硬くなってしまいます。

硬くなった首〜腕の筋肉が、神経を圧迫してしまうのが『胸郭出口症候群』となります。

胸郭出口症候群にはたくさんの種類と症状がある!

実は胸郭出口症候群にはたくさんの種類があります。

大きく分けると3種類です。

そして症状としては、鎖骨周辺の痛みや腕の脱力感・しびれなどがあります。

本来、首からでる神経は筋肉のすきまを通って腕に向かうのです。

首から出てくる神経を「腕神経叢(わんしんけいそう)」と呼びます。

「腕神経叢」が筋肉によって圧迫されることで発生するのが『胸郭出口症候群』。

例えていうならば、本来、人(神経)が歩ける幅の道(筋肉の隙間)が狭くなって、人が通ろうとすると圧迫されて痛いという感じです。

その隙間は身体の部位ごとに名称が以下の様に変わります。

胸郭出口症候群の種類

  • 斜角筋症候群
  • 小胸筋症候群
  • 肋鎖症候群

これらを総称してものが『胸郭出口症候群』と呼ばれており、このような症状をもたらします。

胸郭出口症候群の症状

  • 手指・腕のしびれ
  • 手が冷たい感覚に。
  • 脱力感。
  • 鎖骨や胸の前が疼くような痛み。

理由としては、先ほどお伝えしたとおり神経の通り道が狭くなり、締め付けられているからです。

神経が圧迫されれば、痛みやしびれが出ます。

加えて神経と血管はならんで走っています。

その為、血管も圧迫され、痺れや手の冷たさという症状も出てしまいます。

文献によれば、こう書かれています。
※内容が難しいのでその下に簡単に説明しております。

胸郭出口症候群が斜角筋症候群、肋鎖症候群、小胸筋症候群等の種々のものを含みまた、症状が非常に多様性である事等により、その診断には困難性が伴うとともに充分なる注意を払わなければならないが、その目で見ると結構、症例も多いようである。胸郭出口症候群の診断において、より慎重に診断基準に補充し、われわれなりの診断基準 を考えてみた。

胸郭出口症候群診断上の問題点

この文献を簡単に説明するとこのようになります。

文献の説明

  1. 『胸郭出口症候群』は様々な種類がある。
  2. 症状もたくさんある。
  3. 診断が非常に困難。
  4. 『胸郭出口症候群』になっている人は多い。
  5. 診断は注意深く行わなければならない。

私の経験では、ひどい肩こりと間違えている方が多い印象です。

医師でも診断が困難であるので、より『胸郭出口症候群』の原因部位を特定することは大切となります。

つまり胸郭出口症候群になってしまったら、どの場所で神経が圧迫されているのかを調べることが最優先ということです。

その為以下に『胸郭出口症候群』で知っておいた方が良い原因部位を実際の身体に描いてく解説しています。

参考標準整形外科学 第9版 総編集 鳥巣岳彦 p743

『胸郭出口症候群』の原因部位を実際の身体に描いて解説

理学療法士などの専門家であれば、斜角筋や小胸筋などの筋肉をしっかりと触知できるようにならなければいけませんが、一般の方にはそこまでする必要はありません。

『胸郭出口症候群』で圧迫を受ける「腕神経叢」がどこにあるかを知っていただければ十分すぎます。

もし、神経の通り道のどこかに痛みやしびれ、うずく感じが出ていれば胸郭出口症候群の可能性もあるので覚えておきましょう。

特に四十肩や五十肩で長い期間、肩や首周りを十分に動かせれていない方にとっては大切なことです。

実際の身体に描く前がこちらです。

可視化していない肩

専門家でない限り、何がどこにあるかなんて検討がつかないと思います。

そのため実際に触れられる範囲で描いて解説していきます。

実際の身体に描いた肩や首の骨と筋肉

こちらが実際の身体に描いた首や肩回りの骨と筋肉となります。

描いたというよりかは、「そこにあるもの」をなぞって書いたものです。

その為、書いてある下にはその通りの筋肉や骨が存在しております。

可視化した肩
可視化した阿多

「腕神経叢」を実際の身体に描くと

赤色に塗られているのが今回一番のポイントとなる『腕神経叢』です。

腕神経叢

その前後に「前斜角筋」や「中斜角筋」とよばれる筋肉が存在していますが、一般の方はそこまで知らなくていいので今回は書きませんでした。

だいたい鎖骨のまんなか付近に「腕神経叢」が存在していると思ってください。

太いひもの様にころころとしているのが特徴となります。

※触ると症状が悪化する恐れがあるのでご注意を。

「斜角筋症候群」で痛みやしびれ、違和感を出している方はこの部位でトラブルが起きています。

また鎖骨や鎖骨の下あたりが痛い場合は「肋鎖症候群」が疑われます。

ですが、この肋鎖症候群はほとんどの場合、骨の奇形(正常な形ではない骨のこと)による影響があるので、しっかりとしたレントゲンでの検査が必要になってきます。

またこちらには描いていないのですが、鎖骨の下に「小胸筋」と呼ばれる筋肉が存在します。

胸の前にあるのですが、その部分を押して痛みや違和感が生じるようなら、「小胸筋症候群」が疑われます。

「斜角筋症候群」や「小胸筋症候群」は筋肉の異常な張りが長い間続いた場合に引き起こされる症状となります。

腋窩神経の絞扼障害とはなにか?どのような症状が起きるの?

続いて腋窩神経の絞扼障害について解説していきます。

腋窩神経の絞扼障害とは、簡単に言えば、「手に向かう神経が脇の筋肉の隙間で圧迫されて痺れや痛みを出すもの。」です。

腕神経叢が首から出て鎖骨の裏を通る入り口を「胸郭出口」と呼びます。

この周囲のトラブルのことを総称して『胸郭出口症候群』と呼びます。

前述した通り、首からでた神経は腕のほうへ向かいます。

腕のほうへ向かう時は脇にある筋肉や骨のすきまを通っていきます。

その脇の筋肉の通り道で神経が圧迫されて炎症を起こしてしまうのが『腋窩神経の絞扼障害』。

専門的な用語では「クアドリラテラルスペース(四辺形間隙)」と呼ばれる場所で起こるトラブルのことを指します。

クアドリラテラルスペース

『腋窩神経の絞扼障害』の症状としては以下の通りとなります。

  1. 肩を挙げてしばらくするとじんわり痛くなる。
  2. 脇の方に違和感・痛みがある。

ある文献でも似たような症状を呈すると書かれてありました。
※分かりづらいので文献の後に簡単に説明しております。

「ズーンとするような」、「全体的にジーンと」以上のような表現で屈曲訓練直後、瞬間的な痛みではなく、放散痛がしばらく続くことが共通している。
屈曲の制限因子となりうる大円筋,肩甲下筋付近には、四辺形間隙(quadrilateral space:QLS)が存在し、組織間で腋窩神経を絞扼する可能性がある。

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文献を簡単に説明すると以下の通りになります。

文献の説明

  • 肩のバンザイの動きを改善する訓練で時たまに、ジーンとした痛みが出ることがある。
  • バンザイの動きをじゃまするのがクアドリラテラルスペースであり、その間には腋窩神経が通っている。
  • バンザイでジーンと痛むときは腋窩神経が筋肉で締め付けられている可能性がある。

このクアドリラテラレルスペース(四辺形間隙)は「上腕骨」と「小円筋」「大円筋」「上腕三頭筋長頭」と呼ばれる筋肉からできる間隙のことをさします。

棘下筋

このすきまには『腕神経叢』からわかれた「腋窩神経」などが通ります。

四十肩や五十肩で長い期間に肩の動きが悪い状態でいる筋肉が異常に張ってしまいます。

その筋肉の張りによって、クアドリラテラレルスペース(四辺形間隙)で神経や血管が圧迫されてしまう症状が『腋窩神経の絞扼障害』。

症状が出るメカニズムは『胸郭出口症候群』と同じだと覚えておきましょう。

※もし四十肩や五十肩に初めてなってしまった方は初期管理が非常に大切となります。四十肩・五十肩の全期間のリハビリ方法をこちらの記事に詳しくまとめましたので是非ご覧下さい。

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四十肩・五十肩になってしまうと非常に苦労される方が多い。 なぜなら、 痛みが軽減するまでに約半年かかる 動きの改善までに1~2年ほどかかる からだ。 四十肩や五十肩の治療期間をトータルすると約1年~2

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まとめ

今回は四十肩や五十肩に合併しやすい「胸郭出口症候群」と「腋窩神経の絞扼障害」の原因部位を実際の身体に描いて解説しました。

POINT

  • 四十肩や五十肩が悪化し、長い期間、肩が動かなくなると二次的に筋肉が硬くなることで神経や血管を圧迫して『胸郭出口症候群』を引き起こしてしまう。
  • 『胸郭出口症候群』は「①斜角筋症候群」「②肋鎖症候群」「③小胸筋症候群」の総称であり、鎖骨まわりの痛みや腕のしびれなどの症状が出てしまう。
  • 四十肩や五十肩の合併症として『胸郭出口症候群』以外にもクアドリラテラルスペース(四辺形間隙)で神経が圧迫される『腋窩神経の絞扼障害』もある。

四十肩や五十肩にかかっていなくても、ひどい肩こりだと思っていたら、実際は『胸郭出口症候群』や『腋窩神経の絞扼障害』であったという事が非常に多いです。

この症状が四十肩や五十肩に合併してくると非常に改善が厄介になってしまいます。

そのため、肩の痛みに加えて、腕のしびれなどがあれば、まず身体のどこが原因で痛みやしびれが起きているのかを知ることが大切です。

原因部位が分からなければ、治るものも治らないので覚えておきましょう。

こちらの記事が、四十肩・五十肩に合併している胸郭出口症候群を見つける手助けになれば幸いです。

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