6月になると梅雨シーズンの到来だ。
この6月というのは不思議なもので、身体の痛みを訴える人が急増する月である。
病院で勤務していた時もこのように独立してやっていても、決まって6月は身体のトラブルを出してしまわれる方が多い。
その大半が、「雨の日が多いから」「急に気圧が下がったから」「雨で冷え込むから」と訴えられる。
気圧が下がったから、古傷や骨折のあとが痛む、酷い頭痛が生じてしまうなど、この様におっしゃられている人を皆様も聞いたことがあるのではないだろうか?
ではなぜ、雨の日や台風の日など低気圧が過ぎる時、つまり気圧が極端に低下する時に人間は身体の痛みを出してしまうのだろうか?
特にどうして雨が降る時やその直前に頭痛が生じてしまうのだろうか?
今回はその様な疑問を持つ人の為に、詳しくその問題に対して解説していく。
頭痛を引き起こす原因
まず始めに、どうして人は頭痛になってしまうのだろうか?
実は頭痛には色々な原因が存在している。
軽症なものから重度なものまでさまざまだ。
具体的な原因としてはこちらを参考にして頂きたい。
- 偏頭痛
- 群発頭痛
- 緊張型頭痛
- くも膜下出血による頭痛
- 脳出血による頭痛
- 椎骨動脈乖離による頭痛
これらについて、簡単に症状を説明していく。
偏頭痛の症状
偏頭痛に関しては、血管が拡張することによって頭にズキズキとした痛みが生じる頭痛である。
原因は不明とされている。
群発頭痛の症状
群発頭痛に関しては、睡眠中や明け方に片方の目の奥が痛くなってしまう頭痛である。
これも原因が不明で、目の奥の血管の周囲の炎症と言われている。
脳・頸部の血管のトラブルによる頭痛の症状
くも膜下出血や脳出血、椎骨動脈乖離による頭痛のいずれの場合でも猛烈な頭痛を呈する。
また持続的にその症状が続く。
脳出血に関しては、「らりるれろ」や「パピプペポ」などが言えなくなり、呂律が回らないのが特徴である。
これらの症状が出る様なら、すぐに救急車を呼んで病院にかかるべきである。
緊張型頭痛の症状
緊張型頭痛に関しては、肩こりや首こりに伴い、頭全体にズキズキと締め付けられる痛みが生じる頭痛である。
原因としては、ストレスや運動不足が挙げられる。
現場の経験としては、肩甲骨の内側にある『肋骨の関節』のトラブルや『上位頚椎の関節』のトラブルによる頭痛が多いと感じる。
これらの『肋骨の関節』や『上位頚椎の関節』のトラブルによって、首や肩周りの筋肉が張ってしまう。
その事によって、筋膜で繋がっている頭部の筋肉まで張りが生じてしまい頭痛を招いてしまうのだ。
雨が降ると頭痛が出てしまう原因とは?
雨が降ると『緊張型頭痛』を引き起こしてしまう人が非常に多い。
つまり、肩こりや首こりなどの関節の動きのトラブルが生じてしまうからだ。
なぜ雨が降ると頭痛が生じてしまうのか?
それにはしっかりとした2つの理由がある。
- 雨による気圧の変化が身体に影響を与えるから。
- 関節内部の滑液の粘性が増加するから。
これらについて、文献を踏まえて下記に詳しく解説していく。
雨による気圧の変化が身体に与える影響
人間という生き物は非常にデリケートであり、雨や気圧の変化によって様々な影響を受けるようだ。
気象変化が身体に与える影響について調べていたら、この様な文献を見つけたのでご紹介しつつ、簡単に解説していく。
気圧低下環境は関節痛モデルラットの疼痛行動を一過性に増強した。一方、健常ラットの疼痛行動は気圧低下によっても変化しない。
参考文献:気象変化による慢性疼痛悪化のメカニズム
簡単に解説すると関節にトラブルが生じていると、天気の変化つまり気圧が低下することによって、痛みの感受性が増大するということになる。
また、正常な関節では気圧の低下程度では痛みを感じることが少ないとされる。
つまり、一度関節を痛めてしまった事がある。
もしくは骨折や脱臼をした事がある。
という人は気圧の変化による影響を受けるということになる。
また気圧の変化による交感神経の活動についてもこの様な記載があった。
気圧低下は交感神経を緊張させ副腎髄質からアドレナリンの分泌を亢進する。交感神経の興奮とこのホルモンによって末梢血管が収縮し組織内の虚血、02濃度の低下、pH低下などが発生する。病態時には痛覚線維は局所の病的な変化に対して感受性が高まっていることから、これらの変化は痛覚線維を刺激し容易に興奮を引き起こすことになる。
参考文献:気象変化による慢性疼痛悪化のメカニズム
自由行動下の健常ラットの血圧と心拍数は低温環境でも低気圧環境でも増加し,交感神経末端から分泌されるノルアドレナリンの血中値も上昇することをみつけた。さらに、気圧低下による慢性痛の増強は後肢に分布する両側の腰部交感神経幹を外科的に摘出したラットでは消失したことから、メカニズムには交感神経興奮が深く関係していることが示唆された。
参考文献:気象変化と痛み
この事から、気圧の変化はどこも痛めていない健常者でもある程度は受けている事になる。
その影響としては、血圧や心拍数などの増加であり、交感神経の興奮が生じているとのことである。
そのほかにもこの様な研究結果があった。
天気痛有訴者の内耳前庭が健康者よりも感受性が高いことを示している。
参考文献:気象変化と痛み
健常ラットと関節痛モデルラットの皮膚温度受容器の神経活動を比べると皮膚温低下に対する反応性が関節炎モデルのほうが高いことがわかった。
参考文献:気象変化と痛み
つまり天気の変化によって、痛みを出してしまう人の特徴としては、耳の中にある「前庭」と呼ばれる器官の感覚が鋭い状態になっているそうだ。
そして、関節に痛みを出してしまう人は皮膚温が低下する事によって、健常な方よりも交感神経が興奮しやすいとの事だ。
ここまでの事をまとめると、緊張型頭痛の原因としてはやはり肩こりや首こりによる影響がある。
それらを持っている人たちは、簡単に言えば首や背中の関節にトラブルが生じている人たちである。
そのトラブルを持った人たちが気圧の変化による影響や気温の変化による影響を受けてしまうと、交感神経の活動が活発になり、痛みを感じやすくなってしまう。
そして、緊張型頭痛の原因である肩こりや首こりを酷くしてしまうのだと予想される。
関節内の滑液の粘性の増加
関節の構造に関しても、特徴的なものがある。
動く関節であれば、「滑液」と呼ばれる、関節の動きをスムーズにしてくれる液体が入っている。
こちらの文献の内容をご覧頂きたい。
粘性は希釈度の変化にも敏感で、温度やpHの上昇で低下する。
参考文献:4D-CTで解き明かす関節内運動学 p6 l16-17
関節の中に入っている滑液の機能として、温度が低下すると粘性、簡単に言えば粘り気が上昇するという事になる。
粘り気が少なければ関節はスムーズに動くのだが、寒さによって滑液の粘り気が増えてしまえば、スムーズな動きができずにトラブルを招く事になる。
これが上位頚椎(首の上の方)の関節でおきてしまえば、頭が締め付けられる様な頭痛などの症状が出てしまうということが容易に想像できる事になる。
これらの文献から、雨が降る事によって様々な身体的な反応が出現してしまうので、緊張型頭痛が引き起こされる事が分かる。
※この様な緊張型頭痛に対しては、このような記事に書かれているエクササイズが有効的なので是非実践してみてください。
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まとめ
今回は雨が降る事によって、緊張型頭痛が引き起こされる原因について解説した。
- 頭痛には様々種類のものがある。
- 特に緊張型頭痛は肩こりや首こりが原因で引き起こされる。
- 気象変化によって、交感神経の活動が活発となり、痛みが感じやすくなる。
- 気象変化によって、首や背中の関節のトラブルが起きやすくなり、その結果頭痛を引き起こす原因となる。
文献を踏まえて、雨が降ったり、気圧が低くなったりする気象変化によって、緊張型頭痛が引き起こされやすくなるということを解説した。
この様な緊張型頭痛に関しては、前述した通り、首こりや肩こりに対するアプローチが非常に有効的になる場合が多い。
その為天気が悪くなる度に頭痛が出る人は、肩こりや首こりが生じていないか?それを引き起こす原因である運動不足になっていないか?など生活を見直していく事が必要である。
またくも膜下出血や脳出血、椎骨動脈乖離による頭痛などもあるという事は忘れてはいけない。
ただの頭痛と勘違いしてしまう事もあるので、天気にかかわらず頭痛が出てしまう人はまずは医療機関にて『精密検査』を行なっていく事を強くオススメする。