多くの人が首こりや肩こり、背中の痛みでで悩んでいる。
そして、「たまに肩甲骨の内側がピンポイントで痛くなるのはなぜだろう…」という疑問を持つ人がいる。
歳を重ねていくと不思議と肩甲骨の内側が痛くなってしまう人がこれどもかというぐらい非常に多い。
特に30代を皮切りにそのような訴えをされる方が増加傾向である。
年々身体は衰えていく。
それに加え、生活は便利になっていき、現代人の運動量は減少するばかりだ。
今回はそのような肩甲骨の内側が痛くなる原因について理学療法士が詳しく解説していく。
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この記事の目次
肩甲骨の内側の構造
そもそも肩甲骨の内側にはどのような組織・構造物があるのかご存じだろうか?
構造が分からなければ、原因も分からないのでまず身体の構造からお伝えする。
人の背中には『背骨』や『肩甲骨』がある事は周知されている。
しかし背骨や肩甲骨だけでなく、実は肋骨もあるのだ。
これはあまり認識されていない人が非常に多い。
そもそも肋骨は前にしかないと決めつけている人がいるぐらいだ。
それでは実際の肋骨の構造を見てみよう。
肋骨を前から見るとこのような感じだ。
これは多くの方がイメージしているものと一緒と思われる。
横から見るとこのような感じになる。
肋骨というのは後ろから前へ向かってるのが分かる。
そして下の写真から、実は肋骨が後ろからでも見たり触ったりできる事が分かるはずだ。
ちなみに肋骨が動くというのは中学の授業で学んでいるはずだが覚えているだろうか?
胸や脇に手を当てて深呼吸をすると分かりやすい。
肋骨が動く為、人は呼吸をする事が出来るのだ。
・息を吸う時は肋骨が膨らむ。
・息を吐く時は肋骨が縮まる。
上記については背中の骨構造をお伝えした。
もちろんその上部には筋肉なども多数存在する。
例えば、「僧帽筋」や「菱形筋」と呼ばれる筋肉だ。
実際の人間にその筋肉をトレースした写真がこちらだ。
多くの治療家が背中の痛みはこの「僧帽筋」や「菱形筋」と述べている事が多い。
しかし、それは本当なのだろうか?
ここから話は本題に戻して、肩甲骨の内側が痛くなる原因をお伝えしていく。
肩甲骨の内側が痛くなる4つの原因とは?
肩甲骨の内側が痛くなる原因としては、以下の3つが考えられる。
- 肋骨の関節のトラブルによる痛み
- 内臓の痛み
- 寝具の不具合
- ハイストレス
これらについて詳しく解説していく。
肋骨の関節のトラブルによる痛み
先程の写真を詳しく見てみると肋骨は背骨と関節をなしている事が分かる。
肩甲骨の内側を注意深く触っていくと、この場所と一致した部位に痛みを訴える人が非常に多い。
イヤイヤ、「僧帽筋」や「菱形筋」が原因だ!と主張される方が多いのだが、実際の僧帽筋の中間部の厚さは平均で7.1mmだそうだ。僧帽筋は個体差はあるが比較的薄い筋肉である。
参考文献:ヒト棘腕諸筋の筋線維構成について
つまり、広範囲でかつ肩甲骨の内側の表面の方が痛いという方はこの筋肉の可能性は考えられる。
肩甲骨の内側が痛いと訴えられる方の多くは『ピンポイント』でかつ『深部』の方で痛みを訴える人が非常に多い。
この事から筋肉の痛みではなく、肋骨の関節つまりは肋横突関節や肋骨頭関節と呼ばれる関節の痛みと考えた方が妥当である。
以下のような方は肋骨の関節にトラブルが生じ痛みが出やすいので注意をしよう!
- スーツやタイトな服を着ている事が多く呼吸が浅くなっている人。
- デスクワークの時間が長く、背中が丸まっていたり、呼吸が浅くなっている人。
- 歩いたり、走るなどの有酸素運動をする事機会が少ない人。
- 特定の方向ばかり向いて寝ている人。(例:左側を下にして寝る人は左の肋骨の関節に負担をかけ痛みを出す事が多い。)
上記のような特徴がある人は、肋骨の関節(肋横突関節や肋骨頭関節)に負担がかかりやすく、肩甲骨の内側にピンポイントな痛みを出す事が多い。
これは人の関節には動かなくなると痛みが出やすくなるという構造的な特徴が備わっているからだ。つまり呼吸が浅くなり、肋骨が動かなくなることで、肩甲骨の内側にピンポイントな痛みが出てしまうのだ。
参考文献:不動に伴う痛み発生メカニズムの探索─皮膚組織に着目して─
※肋骨のトラブルによって肩甲骨の内側の痛みだけでなく、ゴリゴリ音も生じる場合がございます。その原因についてはこちらの記事をご参照ください。
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内臓の関連痛による肩甲骨内側の痛み
補足ではあるが、ごく稀に内臓によるトラブルで背中に痛みでる場合がある。
何もしていなくても、背中に鈍痛を感じてしまうなどの症状がある方はすぐに内科への受診をオススメする。
このような場所に鈍痛や鋭い痛みがあれば要注意だ!
胃のトラブルによる関連痛の可能性も示唆される。
※内臓の関連痛に関してはこちらの記事にて詳しくご紹介しておりますので是非ご確認ください。
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寝具の不具合による肩甲骨内側の痛み
人間は人生の約3分の1を寝具の上で過ごしている。
また睡眠中その上で、人間は平均20回以上寝返りをしていると言われている。
これは寝ている時にベッドと身体の接触面の圧力を減らす目的や関節自体が固まらないように身体が動こうとしているからである。
例えば、学生時代校長先生の話を直立不動で聞くのは非常に大変だったのを覚えているだろうか?
人間は動く生き物であるため、その場で固まっているという行為は非常につらいのである。
その為、人間はベッド上で寝返りをして関節を動かそうとしている。
このように考えると寝返りの打ちづらい劣化した寝具を使用しているとその場で固まらざる負えなくなる。
その事が原因で肩甲骨の内側にある肋骨に負担がかかり痛みが出てしまう事が多い。
※寝具の問題による背中の痛みについてはこちらの記事にて詳しく解説しているので是非ご覧ください。
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ハイストレスによる背中の痛み
実はストレス過多も背中の痛みに深く関わっている。
背中には交感神経が走っており、この交感神経が過活動を起こすと背中周辺の筋肉が硬くなってしまう。
つまり、背中の張りや痛みにつながるのである。
この背中の張りは肩甲骨の内側にある肋骨の動きまで制限してしまう。
その事により、呼吸が浅くなり、より交感神経が過活動になる。
その負の連鎖が生じる為、肩甲骨の内側に痛みを生じやすくしてしまう。
※ハイストレスによる背中の痛みの原因についてはこちらの記事にてより詳しく解説しておりますのでぜひご覧ください。
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肩甲骨の内側の痛みを改善する方法
肩甲骨の内側にピンポイントな痛みがある場合の多くが肋骨の動きのトラブルだとお伝えした。
その痛みに関しては以下の方法で肋骨の動きを改善していく必要があるので是非実践していだきたい。
・ウォーキングやランニングなどの有酸素運動を行おう!
・ネクタイを締めている方は緩める時間を作ろう!
・肩や背中周りの体操をしよう!
※デスクワークのし過ぎで呼吸が浅くなっている人や交通事故に遭い、肋骨の動きが悪くなっている人は肩甲骨がゴリゴリ鳴りやすくなってしまう。そんな肩甲骨ゴリゴリの解消方法はこちらの記事でご紹介しておりますのでぜひご参考にしてください。
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肩甲骨を回した時のゴリゴリなってしまう原因としては、 背骨と肋骨、鎖骨の動きが悪くなるため デスクワークや立居仕事で前ば ...
今回の記事を書くにあたって参考にした文献
・SJF関節ファシリテーション第2版 編者 宇都宮初夫 発行者 池田和博 発行所 丸善出版株式会社 p314ー315
・関節内運動学 4D-CTで解き明かす 著者 片岡寿雄 発行所 株式会社南江堂 P15 l7-15
・ヒト棘腕諸筋の筋線維構成について
・不動に伴う痛み発生メカニズムの探索─皮膚組織に着目して─
上記の文献の内容を参考に一般の方でもわかりやすいように肩甲骨の内側に関する情報をまとめました。
まとめ
今回は肩甲骨の内側の痛みに関して説明した。
・肩甲骨の内側のピンポイントな痛みの原因は、肋骨の関節のトラブルによる痛みや交通事故の衝撃による肋骨の関節のトラブルによる痛みが考えられる。
・肋骨は非常にデリケートな場所であり、年齢を重ねるに連れてトラブルを生じやすい場所でもある。
・肩甲骨の内側の痛みで広範囲でかつ表面の方の痛みである場合は筋肉が原因である可能性も示唆される。
・肋骨の関節のトラブルによる痛みと交通事故による痛みは肩周りの体操や有酸素運動を行なって肋骨を動かして改善させよう!
・内臓による痛みが考えられる場合は、早期に内科への受診をしよう。
デスクワークや交通事故後、コンタクトスポーツをされていた方に肩甲骨の内側の痛みが出やすい傾向だ。そのほとんどが肋骨の関節の動きに何かしらのトラブルが生じている事が多い。筋肉ばかりに着目して、全く治らない人が多いが、構造的に肋骨や背骨もある部位である。そのような部位へのアプローチも視野に入れて頂きたい。
問題点に対してしっかり対策していれば、改善する痛みがほとんどだ。肩甲骨の内側にピンポイントな痛みがある方はぜひ肩周りの体操や有酸素運動を積極的に行っていって欲しい。
訂正:2020/05/23