理学療法士の長尾です。今回の記事は、四十肩・五十肩になってしまった人がやっているストレッチの欠点について詳しく解説していきます!
- ストレッチをやると気持ちがいい!
- 治った気がする!
といった理由から、四十肩・五十肩になっても、ストレッチを続けてしまう人が多いようだ。
実はそのストレッチには欠点がある。
それは、四十肩・五十肩にはほぼ効果がないということ。
むしろ症状を悪化させてしまうことが多い。
このように言うと、
「え!?何を言っているの?ストレッチをすれば、みんな柔らかくなるって言っているよ!」
という反論がやってきそうだが、事実、現場で仕事をしていると四十肩・五十肩に対しては、ストレッチがほぼ効果がないことを体感する。
むしろ痛みが悪化してしまう人がほとんどだ。
ストレッチという日本語は非常にあいまいだ。
人によって意味合いが変わってくる。
そのため、この記事で使っているストレッチというのは、「ぎゅっと伸ばすこと」「気持ちいいところまで伸ばすこと」「痛気持ちいいところまでのばすこと」をストレッチの意味とする。
では、なぜ四十肩・五十肩に対してストレッチは意味がないのだろうか?
それは、関節がかたくなる病気であるからだ。
これを大前提に考えないと、いつまでたっても肩の痛みで苦しんでしまう。
そこで今回の記事では、四十肩・五十肩に対するストレッチの欠点について詳しく解説していくのでぜひ最後までお付き合いください。
大前提:四十肩・五十肩は関節が硬くなってしまう病気だ!
みなさまは四十肩・五十肩をこのように勘違いしていることが多い。
- 筋肉がかたまって動かなくなる病気
- 40代・50代の肩の状態
- そこまで大したことのない病気
実際は、四十肩・五十肩を簡単に言えば、治る過程で関節を硬くしてしまう病気である。
肩は次のようにミルフィーユのように色々な組織が折り重なってできている。
- 皮膚
- 筋肉(アウターマッスル)
- 骨(肩甲骨)
- 滑液包(骨と筋肉が擦れないようにするための組織)
- 筋肉(インナーマッスル)
- 関節包(骨と骨をつなぎとめる組織)
- 骨(上腕骨)
第6層である関節包と呼ばれる部分が絶体に硬くなってしまうのだ。
ここで肝なのが、「治る過程」という言葉だ。
肩は、肩甲骨の受け皿よりも、上腕骨のほうが圧倒的に大きい構造からそもそもグラグラして外れやすい関節である。
そのため、いったん関節包に傷ができると、治る過程で絶対に関節が硬くなってしまうのだ。
むしろ、硬くしないと関節包の傷によって骨と骨がつなぎとめれなくなり、外れてしまう結果となる。
これは避けても通れない道である。
四十肩・五十肩の3つの治る過程が以下の通りだ。
- 炎症期(痙縮期):肩が痛くなってから2か月
- 拘縮期:肩が痛くなってから2~6か月
- 緩解期:肩が痛くなってから6ヶ月~1年
この3つの時期のうち炎症期と拘縮期で、肩の関節を硬くしてしまう。
言い換えれば、痛くなってから半年間は関節を硬くしてしまう反応がおきるのだ。
このようにお伝えすると、「じゃ、硬くなるのならば、ストレッチをして柔らかくすればいいじゃないか!」とおっしゃる方が多い。
しかし、その意見は実は間違いである。
その理由を次の章にて解説していく。
結論:ストレッチは「引き伸ばす」という意味。四十肩・五十肩にやれば悪化する
そもそもストレッチは英語であり、「引っ張る・引き伸ばす」という意味がある。
引っ張る・引き伸ばす行為は、物理の原則で「破壊」を招く。
例えば、
- 紙を引っ張ったらどうなるでしょうか?→破れます。
- 草を引っ張ったらどうなるでしょうか?→ちぎれます。
- ゴムを引っ張ったらどうなるでしょうか→ある程度伸びますが、引っ張り続ければちぎれます。
多くの方がゴムを伸ばせば伸びるという理論を、身体にも使っている。
ストレッチをすれば、筋肉が柔らかくなると妄信しているのだ。
しかし、実際はちがう。
物理の法則で、引っ張ることは破壊をまねいてしまうのだ。
それにも関わらず、四十肩・五十肩になってしまった方は、ストレッチを行ってしまう。
ストレッチを行えば、「筋肉が柔らかくなって肩に良いはずだ!」と考えているからだ。
しかし、四十肩・五十肩の病態をもう一度確認してほしい。
四十肩・五十肩は筋肉がトラブルを起こす病気ではなく、「関節が硬くなってしまう」病気である。
つまり、この観点からも筋肉対してストレッチをしたところで意味がないことがわかる。
このように言うと「いや、でもストレッチをすれば、関節も伸びるでしょ!硬くなるならストレッチをして関節も伸ばせばいいじゃないか!」と再度反論してくる人がいる。
しかし、その考えも間違いなのだ。
こちらの文献によると、このように書かれている。
拘縮期は肩関節包の線維化と肥厚が発生し,関 節包の容量が減少することにより疹痛が持続し可動域制限が進行する.これは,結合組織創傷治癒の リモデリング硬化期に相当すると考えられ,線維芽細胞と膠原線維が増殖し毛細血管が退縮する.関節包が脆弱化した時期に,過度な外的ストレスが加わると癒痕内の膠原線維が断裂し,新たな炎症が惹起することが知られている.繰り返す刺激により線維芽細胞が活性化して不規則な方向に膠原線維を合成し,慢性炎症となり関節包はさらに肥厚すると考えられる.
結合組織の創傷治癒より見た肩関節周囲炎の病態と治療
簡単に解説すると
- 四十肩の拘縮期は痛みが続いて動きがどんどん制限していく。
- 拘縮期は関節包が弱くなっている時期である。
- 過度な外的ストレスが加わると、関節の組織がまた損傷し、より硬くなってしまう。
つまりだ。
四十肩・五十肩になってしまうと骨をつなぎとめる関節包が非常にもろい状態になる。
その状態にもかかわらず、関節に過度なストレスを与えてしまうと、再度損傷して、より肩の動きが硬くなってしまうのだ。
過度なストレスというのは、ストレッチのこと。
なぜなら、ストレッチというのは引っ張る・引き伸ばすという意味であり、物理的に破壊を招く行いであるからだ。
前述した通り、肩は、肩甲骨の受け皿よりも、上腕骨のほうが圧倒的に大きい構造をしている。
そのため、非常に外れやすい関節となっている。
もし四十肩・五十肩のように、骨と骨をつなぎとめる関節包が傷ついてしまえば、身体はわざと関節を硬くして外れないようにする戦略をとるだろう。
これがもし柔らかくする戦略をとるのであれば、骨の構造から肩が外れてしまうことになるからだ。
つまり、身体がわざわざ肩の関節をかたくしているのに、柔らかくしようとする考え自体が間違い。
さらには、柔らかくしようとする方法として、ストレッチを採用している時点でもミスを犯している。
痛い肩に対してストレッチを行うことは、2重のミスを犯しており、症状を悪化させる原因となるので絶対にやめた方がよい。
これが四十肩・五十肩の人がみんな行っているストレッチの欠点である。
もし初めて四十肩・五十肩になってしまったら、こちらの記事をご覧ください。四十肩・五十肩の全期間のリハビリ方法を解説しております。正しい道を通れば、四十肩・五十肩は改善してくるものです。ぜひご参考にしていただければと。
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まとめ
今回は四十肩・五十肩の人がみんな行っているストレッチの欠点について詳しく解説した。
POINT
- 四十肩・五十肩は関節が硬くなる病気。
- ストレッチは「引っ張る・引き伸ばす」という意味。物理的に破壊をまねいてしまう。
- 硬くなった関節は非常に弱い組織になっているのでストレッチをすれば壊れてしまう。
四十肩・五十肩になってしまった方は口をそろえてこのように言う。
- みんなストレッチをやっているから、ストレッチをやっていた。
- ストレッチをやると柔らかくなると言われたからストレッチを続けていた。
人から聞いて、それを実践することは良いことだ。
しかし、果たしてそれが自分の肩の状態を良くしているのかということも考えていかなければいけない。
効果がないものを続けても意味がないからだ。
そして、間違いなく言えることは四十肩・五十肩に対してストレッチは意味がないということだ。
そのため、いまだにストレッチを続けている人は今すぐやめていただいた方が賢明である。
皆様のご参考になれば幸いです。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。