千曲川氾濫アイキャッチ

Zenの信念

増える水害!もはや他人事ではない。台風19号被害の普及作業から学んだ6つの教訓とは?

近年、何度10年に1度の大雨・災害というワードを聞いたことだろうか。
記憶に新しいのが『令和2年7月豪雨』です。
記録的な大雨によって大きな被害に遭われてしまった熊本県の皆様へ謹んでお見舞い申し上げます。

今もなお(2020年7月13日現在)雨が止まず、広い範囲で河川の氾濫による浸水被害や土砂災害が発生し混乱が生じています。
昔の自分なら、気にも留めずに普通に生活を続けていたかもしれません。

ですが、到底他人事には思えなくなりました。

前からお越しになられているお客様ならご存じだと思います、2019年10月12日台風19号によって長野県の妻の実家が河川の氾濫の被害に遭ってしまいました。
実際に自分があったわけではありませんが、仲良くさせていただいている親族の家がなくなってしまうのはつらいものがあります。
また美しくかつ広大なりんご畑がものの一瞬でがれきの山と化した様子は見るに堪えれませんでした。
そんな事が今熊本で起きていると考えるといたたまれません。

すぐにでもボランティアでお手伝いに行こうと思っても、「物理的な距離」「covid-19」の影響で行くことも困難。
自分に何ができるのか?

そんな事を考えると客観的に被災された場所をみてきた過去の経験を綴って、今熊本県などの被災した地域でこれから困ってくる事やボランティア活動に参加したいと思っている方に知ってもらった方が良い事、河川の近くに住まわれているが知っておいた方がよい水害に対する恐ろしさと備えの大切さをお伝えする事ぐらいしかできないのかなと感じました。

今の堤防は過去の雨量によって増水した河の水量には耐えられる様に作られていますが、今後温暖化が進むにつれて今の堤防では防ぎきれない水が押し寄せてくる可能性があります。
その為、水害に対する知識を知っていても損はありません。
その様な情報を過去の経験をもとに綴っていきます。

令和2年7月豪雨はなぜ発生し熊本県に大きな被害をもたらしたのか?

今回の大豪雨について現在進行形にも関わらず、気象庁が「令和2年7月豪雨」と命名されました。
それだけ、緊急度が高い災害だと認識した方が良いです。

では、なぜこの様な豪雨が続いているのでしょうか?
そのキーワードはやはり『温暖化』です。

ウェザーニュースの情報によれば、こう述べております。

大量の水蒸気輸送が続いている原因のひとつとして考えられるのが、インド洋の海水温が平年よりも高くなっていることです。

引用:大雨の原因は大量の水蒸気輸送 インド洋の高温も関与か 令和2年7月豪雨

つまりインド洋の海水温が高すぎる為、湿った空気が日本に流れ着いているのがこの豪雨の原因の一つだと考えられております。
それだけではありません。
「線状降水帯」と呼ばれる現象が長く続いているのもこの災害発生の要因となっています。

線状降水帯とは、積乱雲が数十km以内の幅で長く連なりおよそ100km以上の長さに伸びた状態のことを指します。
例えて言えば、夕立を降らせる雲が数十km続いている状態です。

なぜこの様な「線状降水帯」が発生してしまうのでしょうか?
積乱雲自体の寿命はおよそ1時間と言われています。
ですが、熊本県で起きた現象としては、

  • 積乱雲が出来て流れる。
  • 最初にできた積乱雲が消える前にまた積乱雲が出来る。

これが延々と繰り返され、およそ100km以上の長さに伸びてしまいました。

それだけでなく、不幸なことに北からの冷たい高気圧と南からの暖かい高気圧が全く動かず、その間に挟まれた「線状降水帯」が南北に移動できないことによって同じ地区に今もなお雨を降らせてしまっている状態を引き起こしています。

参考:線状降水帯の停滞が豪雨災害を引き起こす

熊本県に甚大な被害をもたらしたのはやはり堤防の決壊

熊本県でも大きな被害をもたらしたのは堤防の決壊による水害です。

実は堤防決壊のメカニズムが4つあるそうです。

  1. 越水:堤防を越えてあふれた水が外側の堤防を削り取って崩壊させる現象。
  2. 侵食:川の水位が上昇し、堤防が侵食され、堤防が下へすべり、堤防の内側が崩れる現象。
  3. 浸透:川の水位が上昇し、堤防内に川の水が浸透して堤防が劣化するもの。堤防の外側が崩れる現象。
  4. パイピング:堤防下の地盤の弱い箇所に、川の水がパイプ状の通り道を作り堤防を沈下させる現象。

参照:堤防決壊メカニズムと「スーパー堤防」てなによ...のお話

参照:決壊仕組みに4パターン目「パイピング」 球磨川の堤防、13日に調査決壊仕組みに4パターン目「パイピング」 球磨川の堤防、13日に調査

熊本県で堤防が決壊した箇所には上記のパイピングも起きていたのではないかと考えられているそうです。

堤防の決壊以外にも内水(用水路)の氾濫も恐ろしいという事実

上記で解説した堤防の決壊は外水氾濫と呼びます。
それとは別に内水氾濫と呼ばれるものも存在しております。

内水氾濫とは簡単に言えば、大雨が降り、排水路や下水管の雨水処理能力を超えた際に生じるものです。
つまり、住んでいる土地に降った雨が川に排泄できずに市街地にあふれてしまう浸水被害のことです。
これは河川の水量の飽和状態にも影響します。
なぜなら、市街地の水は河川に流れるのが普通です。
ですが、河川がいっぱいになっていれば当然流れては行きません。
逆に河川からの逆流すら起こることがあります。

参考:外水氾濫と内水氾濫とは?それぞれの違いと水害について

実は今から綴る千曲川氾濫の時も外水氾濫だけではなく、内水氾濫も起きていました。

2019年台風19号による長野県の被害はどの様なものだったのか?

まず初めに、2019年の台風19号によって河川の氾濫が起きた地域ではそこまで雨が大量に降ったわけではないという事をお伝えしておきます。

多くの方は河川の氾濫・堤防の決壊=その地域に局所的に大雨が降ったと考えがちです。

ですが、事実被害に会った長野県の穂保・長沼地区ではそこまで雨が降ったわけではありませんでした。
台風による風やそれなりの雨は降っていましたが、今回の熊本県のような持続的に大量な雨がその地域に降っていたわけではありません。

ではなぜ長野県の広大な川幅を誇る千曲川は氾濫をおこしてしまったのでしょうか?

その理由としては、

  1. 千曲川上流のある高い山々に猛烈な台風による豪雨が降り、山に蓄えられた水が大量に千曲川に流れ出たため。
  2. ダムの緊急放流が行われたため。
  3. 1㎞ある川幅が5~10kmほど進めんだ河川の下流では200mほどに狭まっている箇所があったため。
  4. 千曲川の構造上、ちょうど河川が曲がるところに急激に押し寄せた水が集中し堤防に負担をかけたため。

この他にも色々と原因がありますが、大まかな原因はこれら4つだと考えられます。

台風19号はとてつもない量の雨を八ヶ岳やアルプスの山々に降らせました。
山は自然のダムと言われています。
そんな2,000mを超える山々でも蓄えることができない雨量をもたらしたのです。
あふれた水はどうなるでしょうか?
言わずもがな、河川に流れ出てきます。それが千曲川だったのです。

それだけではありません。
八ヶ岳などが蓄えられない雨の量です。
付近の山々にある人口的に作られたダムも飽和状態で緊急放流を余儀なくされました。

そうなるとどうでしょうか?
上流ではありえない量の水が河川に流れ出て、たちまち河川が飽和状態になりました。

その大量の水は自然の摂理によって下流へと流れてきます。
不幸なことに、下流では川幅が1㎞から徐々に200mほどまでに狭まっている場所がありました。
ここまで話せば小学生でもわかると思います。
大量の水は流れることができません。
水道管が詰まるのと同じ現象が起きたのです。

あふれた水はカーブを描いている堤防に多大な圧力をかけました。
堤防をも超える川の水は越水を起こしました。
越水を起こした水は堤防の反対側を削りました。
そして多大な負担がかかっていた部分の堤防が壊れてしまったのです。
つまり堤防の決壊を起こし、大量の水が妻の実家の地域に流れ込んでしまったのです。

その力はあまりにも絶大でした。

町を飲み込み一つの集落をなくしてしまいました。

町を飲み込む千曲川氾濫による水害

強固に作られている体育館の状態がその惨状を物語っています。

千曲川氾濫によって体育館の半壊

そして惨劇はそれだけでは終わりませんでした。
河川があふれてしまうだけでなく、用水路にまでその水が逆流を起こし川から離れた地域でも浸水被害をもたらしたのです。

用水路の氾濫

新幹線基地の水没

コンビニの水没

10月と言えば、この地区ではリンゴが赤く色づいて澄み切った青空をバックにとてもきれいなリンゴ畑の景色が見れます。
そんなリンゴ畑もすべて水につかってしまいました。

多くの方がこう考えるかもしれません。
水につかっただけなら、水が引けば大丈夫なんでしょ?

これは非常に浅はかな考えです。
なぜなら、堤防を突き破って出てきた水は川の水です。
堤防の土砂を含むだけでなく、川の泥をも運んできてしまいます。
それだけでなく多量のがれきやごみをももたらします。
つまり、水が引いてからが惨劇の始まりなんです。

リンゴの木水没

リンゴの木水没2

これは決壊付近にあった高さ4mほどのリンゴの木の様子です。
これだけの量の土砂をもたらします。

瓦礫に埋もれたリンゴの木

家屋も床上160m以上の浸水被害でした。

過酷被害

家屋被害

そのあまりの凄惨さに1週間後に現地に行った私は言葉を失いました。
一人の力では成す術がない。
この言葉がまさにぴったりでした。

千曲川氾濫被災後1週間YouTube

3週間たってもごみが大量にリンゴ畑に残っていました。

千曲川氾濫被災後3週間YouTube

5週間たってようやく決壊付近まで見に行くことができました。
あまりにも巨大な堤防の欠損部。
事の大きさが身に染みて分かる映像だと思います。

千曲川氾濫被災後5週間YouTube

こちらの記事で書いたように、この災害があった直後、橋下徹氏が述べていました。

台風19号の豪雨被害を報じるテレビ番組で「上流を氾濫させて下流を守るという考えもある」と指摘し、

引用:橋下徹「上流の氾濫で下流が助かる治水の現実」

もしこれが本当なら、千曲川下流にある新潟を守るために、妻の実家がある農園地帯は故意的にそのように作られていたのでしょうか?

人間は環境に左右される生き物です。
今ご紹介しているのは平面の写真です。
ですが、想像してみて下さい。
360°見渡す限り、このような瓦礫や泥だらけの状態を。
「笑って、元気出していきましょうよ!」なんて死んでも言えないですよ。

何が言いたいかと言いますと、それだけ水害による心理的なストレスは半端ないのです。
どこにもぶつけられない怒りを被災された皆様は感じています。

そんな現状を目の当たりにして、熊本県の方々のことを考えるといたたまれなくなります。

そして、このような惨劇は大きな河川がある都市ではどこでも起こりうると私は思います。
もはや10年に1度の災害は毎年どこかで発生します。
それがもしかしたら、自分の地区でも起きるのではと危惧しておくべきです。

警戒レベル4になったら高確率で水害が来ると思え!

多くの人は水害に対して考えを改めなければなりません。
最近のハザードマップの精度は非常に優れているので、災害が起きたときは高確率で当たっているそうです。
その為、お住まいになられている地区のハザードマップにはしっかり目を通しておきましょう。

また近年では気象庁がかなり早い段階で警戒するように発表しております。
特に警戒レベル3~4になった時は要注意です。
かなりの確率で災害が起きています。

加えて台風や線状降水帯による水害が発生しそうな場合は、河川のライブカメラや警戒情報に注意しておきましょう。
このような災害は夜中にもやってきます。
真夜中にやってきたとしても、すぐに逃げられるよう、大事なものは2階に移動させておいて、避難所にはスマートフォンと充電器、身分証明書や通帳などの貴重品をもって移動されたほうが賢明です。

そして情報収集はNHKもしくはTwitterを使う事を強くおすすめします。
特にTwitterはリアルタイムでたくさんの情報が流れてくるので現状確認にはもってこいのツールとなります。

もし水害に遭ってしまった時に知っておくべき6つの教訓について

気象変動により頻繁に10年に1度の災害が各地で起きている中、もし自分が水害に遭ってしまったらどうしたらいいでしょうか?
毎週のように普及作業に行っていた時にきずいた点を被災者・ボランティア・市役所員の観点から6つの教訓を見つけました。

それが

  1. 被災した時は、まず冷静に。(被災者)
  2. これからの段取りを立てる。(被災者)
  3. なによりもメンタルのケアを大切に。(被災者)
  4. 落ちているのはゴミではない。被災者の方々の思い出だ。(ボランティア)
  5. ボランティアはチームで行き、リーダーを決めておくべきだ。(ボランティア)
  6. 満ちているところに、集めたお金を使うな。(市役所員)

の6つの教訓です。
これらについて少し詳しく綴っていきます。

教訓1:被災した時は、まず冷静に。

最近では気象庁がかなり早めの警戒情報を提示してくれています。

ですが、河川の氾濫による水害は知らぬ間に忍び寄ってくるものです。
今まで普通だった日常が死神の鎌によって一気に刈り取られてしまいます。

それほど自然災害は突然起きて、すぐには現状を受け入れることができない心理状態になります。
それもそのはず、自分の家を見に行った時このような現状だったらどう思うでしょうか?
私だったら、発狂しているかもしれません…

被災地の現状

目を閉じれば、夢であってほしいという気持ちが必ず出てきます。
ですが、少しずつ現実を受け止めてそんなまずは冷静になる努力をしましょう。
慌てふためいても現状は何も変わらないのです。

教訓2:被災したらこれからの段取りを立てる。

水害に被災したら、そこを片付けて終わりという訳にはいきません。
とてもとてもやる事が多いのです。

ただでさえ不安でどうしようもない心理状態なのに、さらに色々やらなければならないというストレスが加わっていきます。
それは人一人が抱えられるもんではありません。
確実にオーバーフローしてしまいます。

なので、家族・親族の力を借りて下さい。
それが最善だと思います。

具体的にやる事は

  1. 水が引く前に仮住まいを決める。
  2. 水が引いたら、罹災証明書を確保する為に被害状況を写真にてとっておく。
  3. 施工会社・保険会社に連絡をする。
  4. 保証について確認しておく。
  5. 罹災証明書を発行する。
  6. 片付けの開始する。
  7. 家の修復を行う。

ざっくり書いてもこれだけのことをしなければなりません。
これらについて、具体的に綴っていきます。

水が引く前に仮住まいを決める。

台風19号被害によって浸水した地域の水が引いたのがおよそ3日~7日前後でした。
その間避難所生活が余儀なくされます。

そして、水が引いたとしても大量の泥が屋内外に散乱しております。
とても住める環境ではありません。

そのことから水が引くまでの時間を使って、親せきを訪ねたり、役所に問い合わせして仮住まいを見つけたほうがよろしいです。

水が引いたら、罹災証明書を確保する為に被害状況を写真にてとっておく。

災害が起きた都市では非常に大混乱が生じております。
それはその都市の役所でも同じです。
非常に多くの問い合わせや書類をさばいていかなければなりません。

その為、罹災証明書を発行するのにも数週間から1か月以上かかる場合が多いそうです。

罹災証明書に書かれた被害認定によって、生活再建支援金や公共料金の減免が受けられることがあるそうなので、円滑に発行してもらうためにもつらいとは思いますが被害状況の写真をあらかじめとっておきましょう。

施工会社・保険会社に連絡をする。

持ち家の場合は、火災保険に加入している場合、保険会社に連絡をして被害状況を伝えましょう。
火災保険には「建物」を対象とした保険や「家財」を対象とした保険があります。
家屋が古い場合は、「建物」を対象とした保険では満足した保証をもらうことができません。
その場合は、「家財」を対象とした保険も加入しておくことである程度の保証をもらえる場合があるそうなので、水害リスクが高い場合は家屋にかけている火災保険の見直しもしてみてはいかがでしょうか?

参考:水災(水害)とは? 火災保険で補償される範囲とされない範囲

また自動車に関しても床上浸水レベルの水害がきてしまえば、水没してしまいます。
もし車両保険に加入していれば、すぐに保険会社に連絡してどの程度の保証が下りるかを確認してください。
災害後は車の重要度が高まるのですぐに行動された方が賢明です。
またこれも水害リスクが高い地域であれば、車両保険の加入も検討しておいた方がよいです。

各保険会社に連絡したら、今度は施工会社に連絡をしましょう。
実は災害後施工会社はとても忙しくなってしまいます。
その地区一帯の人たちが押し寄せるので無理もありません。

床下の施工や家の建て替えをするにしても早い者勝ちとなります。
ちなみに長野県では台風19号の被災から9ヶ月たってようやく解体工事がはじまっている家がざらではありません。
住んでいた家を壊したりするのは心もとないですが、最優先は普段の生活に戻る事です。
悩む前に行動を起こした方がよいと感じました。

保証について確認しておく。

水害に遭っても、日本には被災した時に受けられる支援制度が多数あります。

住宅の応急修理制度や被災者生活再建支援金、義援金の配分、見舞金制度などが存在しています。
被災した状態によって変わってくるので、早急に確認された方がよろしいです。

これらは水害にあったときに 浸水被害からの生活再建の手引きに色々書いてあるので是非ご覧下さい。

罹災証明書を発行する。

これは前述した保証や災害後の片付けにて発生したごみを捨てる際など、色々な場面で必要になってくる証明書です。
片付けを開始する前にまずは罹災証明書を早急に申請するようにしましょう。

片付けの開始する。

水害後の片づけはかなりの重労働です。
水の含んだ泥というのは信じられない重さになります。
また雑菌だらけの為、少し目をこすっただけでまぶたが腫れあがることがざらにあります。

その為、片付け作業に必要なものとしては、

  • 帽子
  • ゴーグル
  • ヤッケ
  • 手袋
  • マスク
  • 長靴
  • 底に穴をあけたバケツ(土のうに泥を入れやすくするために)
  • 土のう袋
  • 雪かき用のシャベル(スコップよりも軽くて使いやすい為)

です。

また被災した場所の片づけは、現場監督がいない工事現場のような状態に陥ってしまう事が多いと感じました。
それもそのはず誰も土木作業なんてしたことがありません。
加えて善意でたくさんのボランティアさんが来てくださいます。

考えてみて下さい。
ただでさえ、家や周囲が混沌としている状況かつ、証明書の取得や保険会社、施工会社とのやり取り、その日の暮らしの心配、家族の心配など重なった上で被災した場所の片付けという重労働も加わってくるのです。
そこにたくさんのボランティアさんがきて、何をすればいいのですか?と聞いてきます。(災害初期のボランティアさん達はグループのリーダー的な人を立てていなかったかもしれません。)
当の本人たちも困っているのにそんな質問攻めを受けるとなると現場監督を経験していない人ならパニックに陥ってしまいます。

そんな統制の取れな状態で妻の実家で起きたのは、善意で来てくださったボランティアさん達によって、思い出の品々が全て捨てられてしまったという事です。
助けたいボランティアさん達にとっては落ちているものは泥にまみれたゴミです。
ですが、当事者にとっては泥にまみれていても思い出の品々です。

原状回復が優先なのか?
思い出の品を選定しながら行って作業をしていくべきなのか?

それは人それぞれだと思いますが、人の善意ある行動は使い方を間違えると時には刃となることは覚えておいた方が良いかもしれません。

もし統制がとれるようなリーダーシップがある方が家族の中にいれば、たくさんのボランティアの方を受け入れても良いと思います。
ですがそのようなリーダーシップを発揮できる方がいなければ、善意が刃へと変わり私の妻の実家の様になってしまうので、ボランティアさんの受け入れは最小限にした方が良いかと。

家の修復を行う。

幸い妻の実家の隣にあった姉夫婦の家は1回の床と壁の張り替えだけで済みました。
ですが、それをすべて業者の方に頼むとかなりの費用が必要になります。
余力があれば、床はがしや床下の泥出しは施工業者の指示を受けて自分で行っても良いかもしれません。

幸いな事に多くの方が手伝ってくださったおかげで、片付けも比較的早く落ち着いたので、床はがしや泥出しは自分たちで行う事になりました。

床はがし

この段階にくるまで約2か月。
妻の実家は比較的早く事が進みましたが、9か月たった今でもまだまだ原状回復できていないところはまだまだあります。

水害後の家屋の対処についてはこちらをご参考にしてください。

参考:水害後の家屋への適切な対応

教訓3:なによりもメンタルのケアを大切に。

水害にあってしまうとこれだけの多大なストレスを抱えてしまいます。
それに加えて重労働まで課せられます。

これはご高齢の方だった場合、何もできません。

心理的な負担や身体的な負担によって、やはり精神的なダメージはかなり大きいようです。
そのような精神的なストレスを如何に解消していくのかも、被災地での大きな課題になるかと考えられます。

理学療法士として言えるのは、身体と精神はリンクしているという事です。
やはり重作業によって身体が疲労していれば、精神的にも傷つきやすいです。
被災地の復旧は重作業なので自分の体力にあった進め方をしていった方が良いかもしれません。

そして、頼れる人はどんどん頼っていきましょう。
日本もまだまだ捨てたものではありません。
助けて下さる方はたくさんいらっしゃいます。
友人や親族、今ではSNSのフォローワーの方まで来てくださる事があります。

そのような助け合いがメンタルを維持しながら原状回復していく為の道のりかもしれません。

教訓4:落ちているのはゴミではない。被災者の方々の思い出だ。

これはボランティアさんが考えないといけない教訓です。

前述した通り、ボランティアさんにとっては落ちているものであり、泥にまみれているものです。
ですが被災者の方にとっては思い出の品々なんです。

落ちている泥まみれのものはなんなのか?という事を考えなければなりません。

「助けにいこう!」これは素晴らしいマインドです。
ですが、善意の押しつけは刃にもなりかねないという事を知っておきましょう。

それを知った上で、助けに行きましょう。
今もなお熊本県をはじめとした多くの地域で助けを必要としている人が多いはずなので。

教訓5:ボランティアはチームで行き、リーダーを決めておくべきだ。

これも前述した通り、被災した当事者の方々は平然を装っているだけでかなり心の中ではパニックを起こしています。
現実を受け入れようとはしているものの現状の整理がつかないのが心境だと感じました。

期間が空けばそのような状況に対して受容できるようになってくるとはずですが、被災初期は特にナイーブなので気を遣わなければいけません。

その為、特に被災初期ではボランティアは単独で行かずチームでかつリーダーをたてて向かったほうが良いと私は思います。
そうすることによって、統制が取れていない現場でも、ボランティアさん達の質問攻めによるストレスや作業の進行が円滑になると考えられるからです。

もし被災初期の現場へボランティアで助けに行きたい場合はチームで勝つリーダーをたてて向かわれることを強くお勧めします。

教訓6:満ちているところに、集めたお金を使うな。

これは市役所員の方にお伝えしたいです。
被災をした地域の混乱を目の当たりにする限りやはり役所の方の仕事も膨大になるようでした。

被災で出たゴミ捨て場へ招集されたり、罹災証明の発行、各業者への連絡などそれはもう膨大な仕事だと思います。

ですが、あまり効果的ではないものに集めた義援金や税を使わないほうがよいのかもしれません。

長野県が被災した当初約1か月足らずでボランティアさんが集めた物資によって生活必需品がほとんど揃っていました。
そんな中2か月経とうというところで市がようやく生活必需品などの配布を始めたのです。
これはあまりにもスピード感がなく、効果的ではないと感じました。

そのような生活必需品も確かに大事ですが、日本の特性としてはすぐにそのような物資は集まってきます。

そこに費用を投じるよりも排水が間に合っていない場所に他県からポンプ車を借りてきて派遣する事や人の力では運べないものを撤去する為の重機を用意することにお金を使うべきだと感じてしまいました。

このような災害の場合は如何にスピード感を出して対応していく事が大切なのではないでしょうか?
その事を全員がこころに刻んでおいてほしいです。

終わりに

過去私が経験した事をもとに今被災されている方やボランティアさん達に知ってほしい情報や考えをまとめてみました。
異常気象によって各地で甚大な被害が出ています。
ただでさえcovid-19によって大変な打撃を受けているのにも関わらず、まだ試練を与えるのかと思ってしまいます。

「明けない夜はない」という言葉があるように、今はつらい気持ちであっても必ずまた元の生活が戻ってきます。
その時まで今被災されている方々は心が折れないよう、強い気持ちを持っていただきたいです。

この記事が多くの被災された方の役に立つことを祈っています。

そして、被災していない場所はこの現状から目をそらさず、いつわが身に降りかかってきても大丈夫なような準備をとりましょう。

こちらのサイトから義援金を募集しているそうです。
もし少しでもゆとりがある方は困っている仲間を助けましょう。

熊本県芦北町 令和2年熊本・鹿児島大雨災害 災害支援・寄付【神奈川県鎌倉市代理受付】|ふるさとチョイス災害支援

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